『大河ドラマが生まれた日』インタビュー
生田斗真×阿部サダヲ、“ドラマの原点”に触れて変化した意識 「熱い気持ちを忘れずに」
1を100にするよりも、0を1にすることの方が難しい。今から60年前を舞台に、0から1を作ったテレビマンたちを描いた作品が、2月4日にNHK総合で放送されるテレビ70年記念ドラマ『大河ドラマが生まれた日』だ。国民的コンテンツとなった大河ドラマの第1作目『花の生涯』はいかにして企画され、制作され、放送されたのか。主人公はNHK芸能局の若手アシスタントディレクター山岡。彼が奮闘する姿をとおして、私たちは大河ドラマが生まれた過程を目にすることになる。
放送を前に、山岡を演じた生田斗真、NHK芸能局プロデューサーで山岡の直属の上司・楠田欽治を演じた阿部サダヲの2人に、本作を通じて感じたテレビドラマへの思いを聞いた。
『大河ドラマが生まれた日』は五社協定の真逆のキャスティング
――まず、本作のオファーが届いた際の気持ちからお聞かせいただけますか。
生田斗真(以下、生田):『軍師官兵衛』、『いだてん~東京オリムピック噺~』、『鎌倉殿の13人』と、大河ドラマにはこれまで3作品に出演させていただきました。でも、そもそもの始まりは何なのか、どんな人たちがどんな思いを込めて作っていたのかはすごく興味がありました。なので、その原点に立ち会えることができることに、すごくワクワクしました。
阿部サダヲ(以下、阿部):大河ドラマの原点に立ち会えることも楽しみでしたし、テレビドラマがどういう形で立ち上がっていくのかはほとんど知らなかったので、すごく興味がわきました。私はNHK芸能局プロデューサーの楠田欽治を演じます。「プロデューサー」という役職に以前から興味があったし、覗いてみたいことがいっぱいあったので、疑似体験できるのがうれしかったです。
――脚本を手掛ける金子茂樹さんとは、生田さんは『俺の話は長い』(日本テレビ系)などでタッグを組まれています。阿部さんは本作が初タッグとなりました。
生田:金子さんの作品は出演させていただいた作品も含めて、ずっと大好きです。今回も金子さんらしいジョーク、嘘みたいな本当の話がたくさん詰め込まれています。実際にあった話を巧みに物語に昇華されていて、本当に面白かったです。
阿部:面白かったですね。笑えるところもあれば、心に刺さるセリフもあって。喋っていても楽しかったです。
――大河ドラマの原点に触れて、演じることへの意識の変化はありましたか?
生田:現在、僕らはテレビドラマの台本を頂いて、現場に行って、撮影をして、それが放送されるのが当たり前のような環境にいさせていただいていますが、ここに至るまでにこんなにも多くの先人たちの努力と奮闘があったんだなと感じました。はじめの一歩というのは本当に大変だったと思うんです。本作でも描かれていますが、当時は映画に出演している役者さんはテレビにはまだまだ出ない時代で。五社協定(※大手映画会社5社による協定で、各社に所属する役者は自社の作品にしか出演できなかった)を切り崩して、テレビの価値、ドラマの価値を上げていった方々がいたんだなと。僕が演じたアシスタントディレクター・山岡や阿部さんが演じたプロデューサー・楠田を通して、役者が演技をしている裏側で、本当に多くの方々による陰の努力があるんだということを、改めて実感しました。
阿部:僕もまったく同じで。僕ももともと舞台からスタートして、今では映画もドラマもいろんな事務所の方々と共演ができているのも、当時の方々がさまざまなしがらみを壊してくれたからなんだなって。いまは歌手の方も、芸人の方も、いろんなジャンルの方が役者もできる時代で、とても楽しいです。先人たちの積み重ねの上に僕らは立っているんだと改めて感じました。
生田:『大河ドラマが生まれた日』は、まさに五社協定の真逆をいくキャスティングですよね。阿部さんもいて、歌舞伎役者の(中村)七之助さんもいて、伊東四朗さんやイッセー尾形さん、中井貴一さんまでいて。
阿部:そうそう。こんなキャスティング構成、当時のスタッフが見たらすごく驚くだろうね。
――2人は『いだてん』に出演されていますが、共演シーンはなかったかと思います。本作での本格共演を経て、互いへの思いに変化は?
生田:阿部さんはずっと憧れの人でした。コメディからシリアス系作品まで、何でもできる方。ずっとご一緒したいと思っていたので、こうやってガッツリ一緒にやれるのが、とても嬉しく、毎日楽しかったです。あとは、「阿部サダヲはセリフ覚えが早い」という業界では有名な噂があったのですが、本当にものすごい早さで覚えて絶対に間違えないのでびっくりしました。台本を写真を撮ったみたいに覚えているんですよね?
阿部:うん。
生田:僕は絶対に真似できないです。まさかとは思っていたのですが、噂は本当でした(笑)。
阿部:斗真くんとは、近い所にいそうだけど本格的な共演がなかったんだよね。出演している舞台も観に行っていたし、楽屋で会うことも多かったのに、一緒の芝居だけがなくて。だから、僕も本作で初めて一緒にやれて嬉しかったです。斗真くんは、すごく勘のいい人だし笑いもできるし、芝居の間も一緒にやっていて好きだった。僕たち2人に加えて、うるさい矢本(悠馬)が入ってくるシーンが多かったですけど(笑)、3人の芝居は楽しかったです。
生田:僕も矢本くんとのシーンは楽しかったですね。特に印象に残っているのが、矢本くんが演じるアシスタントディレクターの大江が仕事を辞めたいと話すシーンで。大江を引き止めるために、山岡は「主演が降板したって脚本家が変わったって誰かがその穴を埋めて毎週放送していくのがテレビだよ。でも俺はお前と最後まで走り切りたいんだよ」と。この言葉は脚本の金子さん自身の思いも入っていると感じましたし、どんな仕事をされている方にも当てはまる言葉じゃないかなと。作品全体の中でも特別なシーンとして印象に残っています。