生田斗真×阿部サダヲ、“ドラマの原点”に触れて変化した意識 「熱い気持ちを忘れずに」

生田斗真×阿部サダヲ、共演作で変化した意識

「テレビドラマ」が大きな岐路に立つなかで

――本作は今から約60年前のお話です。劇中で再現している撮影方法も現在とはまったく違いますが、作品を通して経験してみていかがでしたか?

生田:現代の撮影現場では、「本番いきます」「カメラ回してください、カメラ回りました」「よーい、スタート」。ここまでがだいたい本番5秒前で、3、2、1なんです。でも、この時代は「カメラ回りました、本番30秒前」で、30秒前から数えるんですよ。たった30秒と思われるかもしれないのですが、これがすごく長くてドキドキしました。収録機材が安定するのに時間がかかるからだそうですが、今とはまったく違う時間なんです。本番30秒前からの空気がぴりっとする時間は地獄のような緊張感でした。

阿部:劇中では井伊直弼が討たれた雪が積もった桜田門外の変を撮影するシーンがあります。白銀の江戸城桜田門を再現するために、瓦を白い絵の具で塗って、みんなで白い布を地面に敷き詰めるという今では考えられないようなアイデアと工夫で。白い布をおじさんたちみんなで持って走るのは楽しかったですね。

生田:あれは楽しかったですね(笑)。

阿部:何回も走らされてね(笑)。それが当時は雪に見えたというのも面白いなと思います。

――本作で2人はテレビマンを演じたわけですが、もし実際の現場でも山岡や楠田がいたらどうですか?

生田:阿部さんが演じた楠田は毛嫌いされるタイプじゃないですか(笑)。調子がよくて、誰にでもいい顔して、偉い人にはペコペコして。

阿部:そして、女優さんには甘くて(笑)。

生田:でも、実は作品に対する熱い想いがあるし、テレビに懸ける情熱があるんですけどね。表面上しか知らないと、一緒に仕事をしたいキャラクターではないですね(笑)。

阿部:僕も嫌ですね。演じる上では、ただのお調子者ではなくて、奥さん想いだし、すごく芯がある人だと知っていたのでよかったですが。一緒に仕事をしたくない人で言えば、松尾(諭)さんが演じていた監督の本山。やや傲慢なキャラクターなので、あの人とは一緒に仕事はしづらそうです(笑)。

生田:確かに(笑)。

――テレビマンを演じる上では誰か参考にされたりは?

生田:僕が演じた山岡も、阿部さんの楠田も、実際に大河ドラマ1作目『花の生涯』に携わった方たちをモデルにしています。当時の写真や使っていた道具が演じる上でも大きなヒントになりました。そして、ドラマ制作チームの方々がものすごい分厚い資料を用意してくださるんですよ。これはNHKならではですね。

阿部:本当にそう。あの資料はすごいです。皆さんが想像する以上に細かい情報が記されているんです。

――テレビドラマの原点ともいえる作品を体験して、何か考えに変化などはありましたか?

生田:配信作品も増えて、いつでもどこでも映像を観ることができる時代になって、「テレビドラマ」が大きな岐路に立っていると思うんです。本作を通して、この時代の方々が持っていた熱さを忘れずにもう1回テレビも頑張ろうとも思いますし、彼らがそうだったように新しいことにも挑戦していかないといけないとも感じます。それはどっちがいい悪いではないと思いますし、視聴者の皆さんもどんな思いを受け取っていただけるのか、すごく楽しみにしています。

阿部:楠田のセリフで、「小さい子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが観られるものを作りたいんだ」という言葉があって。その熱い気持ちは自分も大事にしたいと思いますし、それが伝わるドラマに本作はなっていると思います。

――先ほども「五社協定」の反対とも言えるキャスティングとお話がありましたが、錚々たるキャスト陣との共演はいかがでしたか?

生田:本当に幸いなことに、全てのキャストの方とお会いしてお芝居を交わすことができたんです。リングの中に僕だけひとりずっと立っていて、いろんな方が入れ替わり立ち替わりで入ってくる、異種格闘戦みたいな感じでした。七之助さんが来たと思ったら、次は伊東四朗さん、中井貴一さんが登場して、“飛び道具”のようなイッセー尾形さんがやってきたり。毎日が楽しくて、本当にあっという間に撮影期間が終わっちゃったという印象ですね。

阿部:先輩たちが、毎回違うことをしてくるのが、本当に凄いなと思って見ていました。特に伊東四朗さんのところは、羨ましかった。あのシーンは、結構アドリブあったでしょ?

生田:ありましたね。一緒にお芝居ができて興奮しました。言葉では言い表しづらいのですが、伊東さんは“間”が本当に凄くて。

阿部:そんな感じがするよね。伊東四朗さんからしか出てこないような言葉がたくさん出てた。

――最後にこれから作品を観る視聴者へメッセージをお願いします。

生田:今、テレビが変わろうとしている時、変わるべきタイミングなのかもしれない時に、テレビの価値を高めるために奮闘してきた人たちを描いたドラマを作ることの意義を感じています。どうか、皆様、ひとりひとりに楽しんでもらいたいです。実際に、大河ドラマ1作目『花の生涯』を観ていた世代の方々も観てくださると信じて、どのように伝わるのかというのが、今から楽しみです。

阿部:『花の生涯』は1話だけが残っていて、カラーでよみがえったものが『大河ドラマが生まれた日』の翌日、2月5日に放送されます。自分も観たのですが、迫力がありました。皆さんも合わせて観ていただけたらうれしいです。

■放送情報
テレビ70周年ドラマ『大河ドラマが生まれた日』
NHK総合にて、2月4日(土)19:30〜20:45放送
BSプレミアム・BS4Kにて【特別編】、2月20日(月)21:00〜22:29放送
出演:生田斗真、阿部サダヲ、松本穂香、倉科カナ、矢本悠馬、松尾諭、林泰文、仁村紗和、中田クルミ、中村七之助、ともさかりえ、三宅弘城、永島敏行、イッセー尾形、伊東四朗、中井貴一ほか
脚本:金子茂樹
音楽:金子隆博
制作統括:千野博彦(知財センター)、佐野元彦(NHKエンタープライズ)
演出:一色隆司(NHKエンタープライズ)
写真提供=NHK

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