『舞いあがれ!』舞のIWAKURAを支える思いの強さ 柏木とも“納得して”迎えた別れ
ここ数週間にわたってつらく、厳しい展開が続いている『舞いあがれ!』(NHK総合)。特に週の本編最終日にあたる金曜日の放送は物語が急展開する日であり、第14週「父の背中」での浩太(高橋克典)の死に続き、第15週「決断の時」で舞(福原遥)は「ハカタエアライン」の内定を辞退し、柏木(目黒蓮)との別れを選んだ。
サンフランシスコでの語学留学から日本に帰ってきた柏木は、実家のある東京ではなく舞のいる東大阪にやってきた。遠距離恋愛の期間、電話やメールでやり取りを行ってきた2人は決して互いを思う熱が冷めてしまったわけではないはずだが、いつの間にかそれぞれが見ている方向が違ってしまったのが別れの理由と言えるだろう。
「これからも一緒に空を飛びたい」という思いを通じ合わせ結ばれた舞と柏木。その後に起きたリーマンショックによって、舞は就職が延期となり、株式会社IWAKURAが倒産の危機に。さらに追い討ちをかけるようにして浩太が亡くなってしまった。どん底の状況の中で、舞に芽生え始めていたのが、工場を支えたいという強い思いだ。
舞が「お嬢ちゃん」とIWAKURAの従業員から白い目で見られていたのは、いずれパイロットとしてIWAKURAを旅立っていく「お手伝い」としての存在だったから。実際、1年就職が先延ばしになった期間での手伝いであったのは事実であり、ナレーションでも、舞の口からもそのワードは使用されている。しかし、父が亡くなり、母のめぐみ(永作博美)がIWAKURAの社長代行として日々奮闘をしている中で、目の前にいる人を助けてあげたいと思うのが舞の人柄だ。それは航空学校編での吉田(醍醐虎汰朗)や五島で出会った朝陽(又野暁仁)であり、今は自身の母であるめぐみがその当事者となっている。兄の悠人(横山裕)から言われた「その場しのぎの親切」という現実的な言葉も舞の心を突き動かす要因となったはずだ。
パイロットの夢を諦めるよりも、今は工場を離れた方がきっと後悔する。母を助けて工場を立て直したいと、舞は柏木に告げる。夢が違えることは互いが別々の方向を向くということでもあり、一見するとそれでも支え合うことはできるのではないかとも思えるが、舞の決断と責任の大きさ、そこに割り込むことになってしまうかもしれない自分の存在を柏木も理解し、納得した上での別れと言えるのではないだろうか(様々な事情で時間が取れなかったのは致し方ないが、もう少し舞と柏木のシーンを観たかった思いもある)。