吉岡秀隆は“試練”を乗り越える俳優だ 『Dr.コトー診療所』が愛され続ける理由

『Dr.コトー診療所』が愛され続ける理由

 2003年から2006年にかけて吉岡秀隆主演でドラマ化された『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)。16年ぶりの続編となる映画の公開にともない、再放送もされたドラマ版にも再び注目が集まっている。そこで、主演を務めた俳優・吉岡秀隆のこれまでの遍歴と『Dr.コトー診療所』での魅力ついて掘り下げみたい。

 吉岡秀隆は現在52歳。ゆったりとした優しい声と繊細な演技が特徴的で、若い頃は思い悩む等身大の青年役を多く演じ、40代以上の方なら今でも『北の国から』の純くんのイメージが強く、大人になってからも暖かく人間味のある役者として愛されている。

映画『Dr.コトー診療所』©︎山田貴敏 ©︎2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会

 4歳で劇団若草に入所し、1975年のドラマ『大江戸捜査網』(テレビ東京系)でデビュー。1980年の映画『遙かなる山の呼び声』の倍賞千恵子演じる民子の息子・武志役のオーディションで山田洋次監督に見出され、1981年公開『男はつらいよ』シリーズ第27作『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』から第50作まで寅次郎の甥・諏訪満男役としてレギュラー出演。寅さんから人としての様々な帝王学を学び、シリーズ終盤は、満男の恋の行方が物語の中心となり、初々しい若者像を見せ、シリーズを牽引する役目にしっかり応えた。

 2019年公開の『男はつらいよ お帰り寅さん』では小説家になった満男が主人公となり、寅さんの教えを受け継いだ人情味と哀愁のある行動を見せた。『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー主演男優賞を受賞し「撮影現場に行きたくないなと思うとき、必ず僕の胸に笑顔で現われてくれる天国にいる渥美清さんに本当にお礼を言いたいです」とスピーチし感動を呼んだことも印象深い。

 『男はつらいよ』と並行し、1981年から2002年まで、ドラマ『北の国から』(フジテレビ系)で、主人公の黒板五郎(田中邦衛)の息子・純役でレギュラー出演。純がとにかくダメな奴だが、五郎がとことん純を信じる親子愛、またその逆も然り、それがとても愛おしく、連続ドラマの好評を受け、10年単位で子供の成長を追う大河ドラマとなり、日本の全国民が純の成長を見守った。また、「~なわけで」という吉岡のナレーションも印象的だった。

 『北の国から』以外は映画を中心に活動していた吉岡が、2003年にドラマ『Dr.コトー診療所』の五島健助(コトー) 役が、大人になった吉岡の新たなハマり役と出会ったことで、若い世代にも吉岡が知られるようになり、純の呪縛から解放されたことで、吉岡の演技力が再評価されることに。

ドラマ『Dr.コトー診療所』©山田貴敏/小学館©フジテレビ

 『Dr.コトー診療所』は、東京から僻地の離島・志木那島に赴任してきた外科医“Dr.コトー”こと五島健助と島の人々との関わり合いを通して、命の尊さを描いた物語。シーズン1は、人手も医療機器も足りない診療所で奮闘し、余所者には厳しい島民たちからいかに信用を得ていくのかが描かれた。また、コトーが大学病院を辞めるきっかけとなった医療事故という島民に隠していた過去との清算がクライマックスに。吉岡の優しくも、患者を治したいという真っ直ぐな思い、そして島の住民たちが少しずつ心を開いていく心の交流が丁寧に描かれていった。コトーが島民を病から救い、コトーの心の病が島民に救われていく姿は涙なしには観られなかった。また、島民たちの人間模様も魅力的なところが、人気シリーズとなった理由だろう。

 2006年のシーズン2は、コトーの問題よりも一番信頼する看護師・星野彩佳(柴咲コウ)の乳がんや、コトーに憧れ医者を目指し中学受験する原剛洋(富岡涼)と剛洋のために金策に励む漁師の父・原剛利(時任三郎)、新人看護師の仲井ミナ(蒼井優)の奮闘など、コトー以外の様々な問題が進行していく内容で、島に根付いたコトーがどう寄り添っていくのかが描かれていた。

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