宮城リョータがカッコよすぎる! 原作未読者が『THE FIRST SLAM DUNK』で受けた衝撃

 筆者が生まれた1996年という年は、『SLAM DUNK』が『週刊少年ジャンプ』で連載終了した年であった。そういうわけで自分の人生に『SLAM DUNK』が関わってくることはなかった。中学生時代に兄が『SLAM DUNK』を全巻購入したが、一般的な長男のいじわるさによって一度も貸してくれることはなかった。自分も兄にいくら乞うても無駄であることを学習していたので、特に貸してもらおうと頼み込むことはなかった。こうして『THE FIRST SLAM DUNK』が、自分にとってのはじめての『SLAM DUNK』となった。その衝撃と感動を、ここに記したいと思う。

「主人公の人、誰!?」

 まず驚いたのはそこだ。『SLAM DUNK』世代でないとて、受動喫煙的に『SLAM DUNK』のインターネットミームを摂取してきた。なのでミーム登場率の高い安西先生とゴリ(赤木剛憲)は当然知っていた。髪型が違うので最初はわからなかったが「バスケがしたいです」の三井寿もなんとなく。それから主人公である桜木花道と流川楓のことはもちろん知っている。だけど『THE FIRST SLAM DUNK』で主人公を務めた宮城リョータのことは知らない。インターネットミームで見たこともない。本当にこの人誰だろうか。映画オリジナルキャラクターなんじゃないかと疑ったくらいだ。

 しかし、だからこそだろうか。宮城リョータは筆者のような完全初見の人にとって丁寧な導入として機能している。飄々としながらも決して追いつけない亡き兄という影を追いもがき続け、震える手をポケットの中に秘めては精いっぱいの意地っ張りを言ってみせる。宮城リョータ、これで本編の主人公じゃないのが無理があるだろう。いくらなんでも魅力的すぎる。背の高さがアドバンテージとなるバスケという競技で「背が低い」という設定もものすごく主人公っぽい。こんなにカッコよくて魅力的な男の話題を、なんで今の今まで全く聞かなかったのだろうか。

 そして宮城リョータの過去という丁寧な導線によって、物語はやがて試合シーンへとなだれ込んでゆく。そこに第二の衝撃がある。「これ、最終回じゃない?」だ。『SLAM DUNK』に興味なかったとて、『THE FIRST SLAM DUNK』の評判はわずかに聞き及んでいた。みんな興奮した面持ちで「凄かった感動した」と語りつつ、その核心については一切口を閉ざす。要領を得ないが、とにかく凄いことはわかる。そんな感想ばかりだ。それが本作に興味を持つきっかけのひとつとなったのだが、蓋を開けてみればなるほど納得だ。なぜなら最終回だから。もちろん全31巻からなる原作を2時間という尺で全て映像化するとは思っていなかったが、流石に最終エピソードを映像化しているのには驚いた。それと同時に「大丈夫だろうか?」とも思った。なぜなら自分は『SLAM DUNK』完全初見であり、そんな人間が『THE FIRST SLAM DUNK』を楽しめるのだろうか? 結論から言おう。凄かった。そして感動した。『THE FIRST SLAM DUNK』は完全初見にもかかわらず、その物語にのめり込まされた。

 完全初見の筆者が最終回の映像化である『THE FIRST SLAM DUNK』を楽しめたのは宮城リョータが丁寧な導線になっていたというのもあるが、なにより試合シーンの演出の凄まじさに尽きる。正直な話、本編を観賞するまでは本作の3DCGアニメーションに不安を覚えていた。だが、今ならわかる。『THE FIRST SLAM DUNK』という作品においてこれ以上の正解はないと。絵柄は確かに漫画チックなのに、思わず宮城リョータの吐息を感じるほどのリアリズムに溢れている。

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