後悔を抱える大人たちに捧げる 『伝えたかった、アイラブユー』亡き父と娘が旅する6日間
なぜ、あんなことをしてしまったのか。なぜ、あんな選択をしてしまったのか。年齢を重ねるにつれ、いろんな後悔が頭にチラつくようになる。それが人生に決定的な影響を与えたことであればなおさらのこと。そこで、思いもよらない方法で過去の失敗に向き合おうとした親子の物語が、フランスから届けられたスターチャンネルEXにて独占配信中ドラマ『伝えたかった、アイラブユー』だ。
パリで暮らす女性ジュリアは、恋人のアダムとの結婚式を目前にしていた。ところが、長年疎遠になっていた父親のミシェルが死去して、父親の葬儀のために結婚式を延期した。そして、その葬儀の日、ジュリアのもとに大きな木箱が届く。そこに入っていたのは、なんとミシェルそっくりのアンドロイドだった。ミシェルの記憶がすべてインプットされていて、喋り方、動き、性格など、すべてミシェルにそっくり。アンドロイドによると稼動できるのは6日間だけで、その短い間に親子で旅をしたいという。ジュリアは戸惑いながらも、アダムには内緒でミシェルと旅に出る。
ミシェルを演じているのは、フランスを代表する俳優、ジャン・レノ。これまでレノは『ニキータ』『ミッション:インポッシブル』など様々な作品に出演してきたが、日本のCMでドラえもんを演じて話題になったこともあった。今回はドラえもんに続くロボット役で、動きに微妙に機械的なニュアンスを加えながら、人間味溢れるロボット演技が見事。あれこれ口やかましいところはあるけれど、どこか憎めないミシェル/アンドロイドをコミカルに演じている。
一方、ジュリアを演じているのはルーマニア出身のドイツ人俳優アレクサンドラ・マリア・ララ。『ヒトラー ~最期の12日間~』の演技を観たフランシス・フォード・コッポラ監督が感動して彼女に手紙を書き、『コッポラの胡蝶の夢』の主役をオファーしたという実力派女優だ。旅を通じて変化していくジュリアの胸の内を繊細に演じている。
物語は親子のロードムービーのように進んでいき、パリからブルージュ、ベルリンとヨーロッパの美しい風景が楽しめるのも本作の魅力のひとつ。そして、旅のなかで親子の間に横たわるわだかまりが浮かび上がっていく。実業家だったミシェルは、家庭を省みることがなく仕事一筋。ジュリアは父親から見捨てられたように感じていた。そんな中、大学を卒業した頃に、父を許せなくなる決定的な事件が起こる。その事件に親子を引き戻したのは、ブルージュで偶然見た一枚の絵だった。そこに描かれていたのは、ジュリアには忘れられない運命の人。そして、物語はベルリンの壁崩壊後に起こったジュリアの恋へと遡り、アンドロイドからジュリアに驚くべき事実が告げられる。