“村社会”における根深い因襲 『ガンニバル』で描かれる長閑さと狂気のコントラスト

『ガンニバル』で描かれる長閑さと狂気

 村人を襲ったクマを仕留めた後藤家の人間たちが、穏やかに手を合わせてからクマの肉を貪り食うショッキングなシーンは、恵介(笠松将)の語る言葉でたちまちスピリチュアルな儀式へと様変わりする。「こいつを食うことで、ばあちゃんは血と肉となってわしらの中に生き続ける」。作品を観る前にイメージしていたホラー映画的な一時的な怖さとは明らかに異なる、あえて言うならば『ミッドサマー』などを彷彿とさせる “村社会”における根の深い因襲の末恐ろしさがひしひしと滲み出す。

 そしてそれは、第2話でさらに際立つことになる。序盤の異様な葬列シーンで、そこに潜り込むように現れた狩野の娘・すみれ(北香那)が言い放つ、「こいつら人間を喰ってる」の言葉。荒れ狂う参列者たちを一蹴する長身の男の威圧感。1人で後藤家に向かう大悟を待ち受ける、後藤家の者たちからの洗礼と、村を牛耳る彼らも恐れる“あの人”の出現。今後のエピソードへの好奇心をそそられるいくつもの謎を提示していく第2話のスピード感は尋常ではない。

 駐在所の柱に狩野が刻んだであろう「ニゲロ」の文字を、何か知ったような表情で見つめる恵介。彼のバックグラウンドが大いに気になるところではあるが、原作の流れ通りに描かれるのであれば、先に狩野の居場所や大悟の過去が描かれるのであろう。2022年の終わりにと言うべきか、2023年も早々からと言うべきか、いずれにせよとんでもないドラマが現れた。

■配信情報
『ガンニバル』
ディズニープラス「スター」にて、独占配信中
出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、吉原光夫、六角精児、酒向芳、矢柴俊博、河井青葉、赤堀雅秋、二階堂智、小木茂光、利重剛、中村梅雀、倍賞美津子
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
監督:片山慎三、川井隼人
脚本:大江崇允
プロデューサー:山本晃久、岩倉達哉
©2022 Disney

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