エンタメ界のド真ん中の山﨑賢人、松村北斗&目黒蓮の活躍 2022年心に残った名優たち
この2022年も、映画、ドラマ、演劇にと、さまざまなフィールドで多くの俳優たちに魅了された。それぞれの俳優が紡ぎ出した特別な瞬間を挙げればキリがないというもの。それでも、ここでは特に印象に残った男性俳優10名にフォーカスし、その功績を振り返ってみたい。もちろん彼らに順位はない。
まずは、役所広司とのぶつかり合いを繰り広げた『陸王』(2017年/TBS系)からちょうど5年、今度は主演として「日曜劇場」に帰ってきた山﨑賢人。私たちが彼の姿を目にすることができた作品は、ドラマ『アトムの童』(TBS系)と映画『キングダム2 遥かなる大地へ』だけだが(本稿を執筆時点で『今際の国のアリス』シーズン2は配信されていない)、この2作だけあれば十分過ぎるくらいだろう。どちらの作品でも、彼の世代のみならず、日本のエンターテインメント界の最前線にいる者たちを座長として率いてみせたのだ。いまの山﨑は、活気を取り戻したエンタメ界のド真ん中に存在している。
そんな山﨑の前に“強敵”として立ちはだかったのがオダギリジョー。ご存知のとおり『アトムの童』でのことだ。ほかの俳優の代打としての急な登板だったようだが、ヒール役として、物語の熱き展開をさらに増幅させる役割を見事に担っていた。『ぜんぶ、ボクのせい』では新進気鋭の映画監督に肩を貸し、自身でも『オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ』シーズン2(NHK総合)を手がけ、『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)では初めて朝ドラに出演。じつにさまざまなかたちで“頼れる表現者”であることを示した1年だった。2022年の朝ドラといえば、やはり『ちむどんどん』(NHK総合)での竜星涼の好演も忘れがたい。演じた“ニーニー”はかなりの問題児キャラであり、視聴者の反感が竜星自身までにも向かったのは、彼がプロとして役に徹した証だろう。むしろ筆者は好感を持ったのだ。2023年はまたスクリーンでもハジける竜星の姿を見たいものである。
各作品にチラと登場しただけで演じる人物の背景をも垣間見せたのが、松坂桃李、窪田正孝、そして妻夫木聡だ。松坂は『流浪の月』と公開中の『ラーゲリより愛を込めて』で、窪田は『マイ・ブロークン・マリコ』と公開中の『ある男』、妻夫木も同じく『ある男』でである。彼らが作品ごとで扮したキャラクターたちは、演じる技術や、各々の中で作り上げた感情を出力しきれば成立するというものではなかった。どのキャラクターも各作品のテーマと密接な結びつきを持つ存在で、何よりも彼らに必要とされていたのは、“どのようにしてその場に存在するのか?”ということだったのではないだろうか。“その場”とは、撮影現場のことであり、物語のことであり、作品そのもののことだ。演出面に依る部分も大きかったのだろうが、秀でた俳優は具体的なセリフに頼ることなく、キャラクターの過去を、もっと言えば彼らがどんな人生をたどっていまそこに存在しているのかを、ほんの限られた時間の中でも垣間見せる。三者の妙演を前に、そんなことを改めて思い知らされたものである。