『PLAN 75』『冬薔薇』『百花』など話題作に出演 “映画俳優”河合優実の可能性

世界の映画シーンに躍り出る河合優実

 SF青春ドラマ『17才の帝国』(NHK総合)での好演が記憶に新しい河合優実の存在は、同作によって広く知られることになったのではないだろうか。2019年のデビュー以降、すさまじい勢いで頭角を現してきた彼女だが、連続ドラマで主要キャラクターを演じる機会はなかなかなかった。しかし、映画ファンにとっては知る人ぞ知る、あるいはもはや知らぬ者はいないであろう存在であり、河合には“映画俳優”の印象が強くある。公開中の『PLAN 75』での妙演は、さらにそのイメージを強固なものにするとともに、演技者としてのさらなる可能性を感じさせるものだ。

 河合の存在が映画ファンの間で一気に知られるようになったのは、やはり2020年公開の『佐々木、イン、マイマイン』だろう。タイトルロールである佐々木(細川岳)が運命的な出会いを果たす女性を演じ、短い出番ながらもとても重要な役どころを担った。怪物的なパワーを持つ佐々木が大人になるにつれ少しずつ減速していくさまを、物語の後半から登場する彼女はそっと寄り添うように受け止めなければならなかったのだ。独特な空気感を持った、“受けの演技”が上手い俳優だと思った。

『サマーフィルムにのって』(c)サマーフィルムにのって製作委員会

 翌年には、2021年の日本映画を代表するものと言っても過言ではない『サマーフィルムにのって』や『由宇子の天秤』などの出演作が公開。河合はもうこのあたりですでに、日本映画界における自身の重要なポジションを築いていたように思う。前者はSF要素のある青春映画であり、後者は“正義”を問う完全なる社会派映画。河合はいずれも控えめな高校生に扮しているが、仲間たちと眩しいひとときを過ごす高校生像と深い孤独を抱えた高校生像をそれぞれ立ち上げ、演技のバリエーションの豊かさを示した。

 そして、今年も河合の出演作の公開が相次いでいる。『ちょっと思い出しただけ』『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『冬薔薇』ーー出番の多寡や作品における役どころはそれぞれ異なるが、彼女が表現するキャラクターたちの多くには、どこか影があるのを感じる。河合自身が得意とするキャラクターをことごとく得てきたというのは間違いないはずだが、『17才の帝国』では合理性を重んじる頭のキレる屈託のない女性を演じ、彼女に抱いていたイメージは大きく変わりつつある。特に驚かされたのが、現在上演中の舞台『ドライブイン カリフォルニア』での河合の姿だ。麻生久美子や谷原章介、そして何より阿部サダヲをはじめとする「大人計画」の個性的な面々に混じり、アップテンポな悲喜劇を展開させている。演技とは基本的に他者がいてこそ成り立つもの。同作での河合は終始ハイテンションで、“受けの演技”も見事ながら“攻めの演技”も果敢に実践している。得意とする役どころにハマるばかりでなく、そもそも高い技量を持った俳優なのだ。舞台上での生のやり取りにこそ、技量は表れるものだろう。

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