ガンダムファン以外も取り込んだ『水星の魔女』 楽しい学園ドラマの裏に漂う不穏な空気

ガンダムファン以外も魅了した『水星の魔女』

 そして同性婚も普通にある世界観で、ミオリネが「よろしくね、花婿さん」とクールに告げる台詞から、驚愕のスレッタの「ええ~!?」で締める楽しい第1話ラストで『水星の魔女』の世界にガッツリ惹きこまれた視聴者も多かろう。オラオラ系の嫌な奴かと思いきや、決闘で自分を打ち負かしたスレッタにプロポーズをするグエルの急変ぶりで、グエルが傲慢な俺様キャラではないことを早々に示した第3話も素晴らしかった。

 スペーシアンを敵視するあまり、スレッタにキツく当たっていた地球寮の狂犬チュチュ先輩ことチュアチュリーが、スレッタもまた故郷の人たちの希望の星なのだと自分自身に彼女を重ね、いじめっこ連中を拳で殴りつける描写や、誰もが大企業の御曹司としか見てくれなかった自分を、初めて素直に誉めてくれたスレッタに好意を寄せるグエルなど人間ドラマも絶好調で、スタッフ側がファンの期待感を掴みながら制作を進めている様子が伺える(特番のナレーターを担当したり、番組の広報ラジオにも起用されたグエルの扱いが特に顕著である)。

 学園ガンダムとして順調な滑り出しを見せた『水星の魔女』だが、テレビシリーズ第1話放送前に配信で公開されたプロローグでは、医療方面の新技術GUND(ガンド)を巡るいざこざで多くの人の血が流れ、逃げるように星を追われたGUNDフォーマットのテストパイロット、エルノラと娘エリクト……そしてこの母娘が逃亡時に乗っていたモビルスーツ、ガンダム・ルブリスが、その後どうなったのかなど不穏な要素も散りばめられており、これらの伏線がテレビ第2クール以降の展開にどんな暗い影を落とすのかも気になる。

 第1クール終盤は、ミオリネの父デリングの暗殺計画とともに、陰謀が一気に動き出し目が離せない展開になっている。かつて平成ガンダム作品で最大級のヒットになった『機動戦士ガンダムSEED』(2002年〜2003年)のように、『水星の魔女』が令和のエポック的ガンダムになるか否か、本作のファンたちは今、リアルタイムで歴史を目撃しているのだろう。

参照

※ https://realsound.jp/movie/2022/10/post-1148938.html

■放送情報
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
MBS/TBS系全国28局ネットにて、毎週日曜17:00〜放送中
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:小林寛
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:モグモ
キャラクターデザイン:田頭真理恵、戸井田珠里、高谷浩利
メカニカルデザイン:JNTHED、海老川兼武、稲田航、形部一平、寺岡賢司、柳瀬敬之
音楽:大間々昂ほか
声の出演:市ノ瀬加那、Lynn、阿座上洋平、花江夏樹、古川 慎、宮本侑芽、富田美憂ほか
©創通・サンライズ・MBS
公式サイト:https://g-witch.net/
公式Twitter:@G_Witch_M

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