『天上の花』東出昌大×入山法子、“映画”への熱い思い 「魂を必ずお届けできるように」

東出昌大&入山法子、“映画”への熱い思い

「脚本・荒井晴彦」作品に出演すること

――先程、東出さんからも名前が出ましたが、「脚本・荒井晴彦」の作品に出演することについては何か思いはありましたか?

入山:怖かったです、どんなことされるんだろうって(笑)。荒井さんの描いてきた女性たちはすごく輪郭が太いイメージがありました。だから、「たくましく現場にいねば!」みたいな(笑)。そんな覚悟は撮影前からありましたね。

東出:僕は荒井さんといつかご一緒したいと思っていたんです。で、本作のお話をいただいてお会いした瞬間、荒井さんの実体験を交えたいろいろな説明を受けまして……(笑)。

入山:実体験……(笑)。

東出:そう、愛とか恋とか不条理とか。そういうお話を伺ってて、あぁやっぱり素敵だなぁとしみじみ思いました。荒井さん自身も、「わからないことは多いけど、現場で何かしらの形にしてきてくれ」と。荒井さんの脚本はとにかく登場人物が艶っぽいですよね。言葉選びも本当に素敵で。五島さや香さんと荒井さんの脚本なら、「やりたい! やりたい!」という思いだけでしたね。

――そんな脚本をはじめ、本作は映画でしかできない試みが随所にあると感じます。今回の現場はどうでしたか?

東出:決して大規模な作品ではないので、いつも以上に全員が一致団結しているというか、全員野球みたいな感覚がありました。

入山:うんうん。この表現があっているか分からないのですが、大学サークルの皆で青春しながら作ってるみたいな感じで。初めての経験でした。

東出:うんうん。

――それは映像からも伝わります。

東出・入山:(笑)。

――本作で印象的だったのが、三好の「売れるものがばかりが素晴らしいわけじゃない……」という言葉で……。

東出・入山:あぁーー!!

東出:荒井さんの情念というか、怨念というか(笑)。これが言いたいんだと思いました。

入山:そうそう。荒井さんも、監督も、プロデューサーも、皆さんの思いがこの言葉に詰まっていて。

――ちょうど作品の急所の言葉だったようで良かったです(笑)。

東出・入山:(笑)。

――そして、本作は「戦争映画」という側面があります。この時代を映画として描くことについて何か感じるものはありましたか?

入山:作品を観て、人それぞれに違う感想を抱くと思うのですが、必ず戦争があったこと、戦争の中で生きていた人がいることを知るきっかけにはなると思うんです。慶子はあの時代には珍しいタイプの女性ですが、いつの時代もこんな女性がいたんだ、こうすることでしか生きられなかった人もいるんだなと思ってもらえたらと思います。

東出:入山さんがお話してくれたことと重なるのですが、こんな人生もあるんだと考えるきっかけになってもらえればうれしいですね。三好は知らず知らずのうちに戦争詩という形で戦争に加担していって、間違いを取り返せないところまで行き着いてしまう。でも、その間違いも含めて、映画などの芸術表現を通して、後世に伝えていく、残していくことの意義はとても大きいものだと感じています。いまを生きていく上でもいろんなことを考えるきっかけになる作品になっていると思います。

――最後に本作をこれから観る/観た観客へメッセージをお願いいたします。

入山:ずっと、映画の現場への憧れというか、映画の仕事をしたい!という思いがあったんです。映画は曖昧な感情を受け入れてくれる世界で。『天上の花』にもそんな思いがたくさんありました。愛する気持ちが憎しみになってしまったり、愛したいのに愛せなかったり、許したいのに許すことができなかったり……。うまく表現できないのですが、そんな言葉にすることができない思いを観客の皆さんにも受け取っていただけたらうれしいです。

東出:予算が限られていて、規模が小さかったとしても、僕らはやっぱり映画人として良い映画をお届けしたいと思うんです。で、さっきおっしゃっていた良い映画とはなんぞやって、売れるものだけが素晴らしいとは限らないんだっていう言葉のように、その中で皆さん作家性だったり映画っていうものの持つ魂の強さみたいなのを信じて作ると思うんです。少ない予算でも規模感が小さくても、エンターテインメントと言われるものじゃなくても、でもその魂みたいなものを必ずお届けしたいと思って映画人は作るし、詩人は詩を考えるし、絵描きは絵を描くし。だからそういう意味で言うと、映画の本当に核としてあるべき魂みたいなのがこの作品の中には宿せたんじゃないかなと思います。僕らが模索した魂の姿みたいなのを劇場に観に来ていただければうれしい限りです。

※記事初出時、タイトルに誤りがありました。訂正の上、お詫び申し上げます。

■公開情報
『天上の花』
新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開中
出演:東出昌大、入山法子、浦沢直樹、萩原朔美、林家たこ蔵、鎌滝恵利、関谷奈津美、鳥居功太郎、間根山雄太、川連廣明、ぎぃ子、有森也実、吹越満
原作:萩原葉子『天上の花―三好達治抄―』
脚本:五藤さや香、荒井晴彦
監督:片嶋一貴
プロデューサー:寺脇研、小林三四郎
製作プロダクション:ドッグシュガー
配給:太秦
製作:「天上の花」製作運動体
©︎2022「天上の花」製作運動体
公式サイト:tenjyonohana.com
公式Twitter:@tenjyonohana

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<応募締切>
12月23日(金)

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