宮下兼史鷹、『ブラックアダム』は“ゆとり世代ヒーロー”? アクションスターの条件を語る

宮下兼史鷹が語る、アクションスターの条件

 お笑いコンビ・宮下草薙のツッコミとして活躍する宮下兼史鷹。芸人としての顔以外にも、ラジオや舞台など多岐にわたる活躍をしている。おもちゃ収集が趣味、サブカルチャーに精通している無類の映画好きである彼の新連載『宮下兼史鷹のムービーコマンダー』。第4回となる今回は、12月2日に公開された映画『ブラックアダム』の魅力について語ってもらった。

【ネタバレあり】「宮下兼史鷹のムービーコマンダー」第4回『ブラックアダム』

ピアース・ブロスナン演じる“イケオジ”ヒーローに魅了

――『ブラックアダム』をご覧になっていかがでしたか?

宮下兼史鷹(以下、宮下):ドウェイン・ジョンソンは他の作品でもそうですが、無敵のキャラクターを演じることが多いと思います。ただ、今回はより無敵。もう“ドウェイン無双”と言っても過言ではありません。無敵な彼が見たい人は、ただ黙って観に行けというくらい、ジョンソンの強さが爆発している映画だと思います。主人公のブラックアダムも魅力的ですが、そんな彼を止める個性的なヒーロー集団「JSA(ジャスティス・ソサエティ・オブアメリカ)」のメンバーが僕にはものすごくブッ刺さりました。特に、ピアース・ブロスナン演じるドクター・フェイトは、ビジュアルから刺さりまくっていて、どんなキャラクターなのか、どんな能力を使うのか、映画を観る前からとても気になっていました。イケオジがイカしたヒーローになっているのがもう、僕のツボを刺激するというか。今回、僕は「ドクター・フェイトを観に行け」って友人に言っているくらい、本当に脇を固めるヒーローが個性的で良いんです。サイクロンも「自然を操るヒーロー」というのは、よくある設定ではあります。それこそ『X-MEN』で言えばストームですよね。ただ、このサイクロンは能力が美しい。描写にすごく力を入れているなって感じました。舞うように戦う。その効果的なエフェクトが綺麗で、そういうビジュアルも能力としての魅力に感じました。やはり、本作のアクションはどれをとっても目を見張るようなものがある。ベタではあるけど、ベタすぎずにしっかりと工夫をしていることが感じられました。2時間程度の映画ではありますが、僕は3時間になってもいいからJSAの物語をもっと深掘りしてほしいくらい良かったですね。

ーー“アンチヒーロー”と謳われている、本作のブラックアダムのヒーロー性については?

宮下:彼はひねくれたというか、言うなれば“ゆとり世代ヒーロー”ってくらい、やる気がないんです。「なんで俺がやらなきゃいけないの?」って感じなので、ここがやはりアンチヒーローとしての面白さですね。ただ、僕はドウェイン・ジョンソンという俳優とそのキャラクター性が最初結びつかなくて。彼といえば“天然キャラのすごくいいやつ”って役のイメージが強いし、プライベートでお子さんとすごく仲良くしている映像を見ているので、そんな彼がまさかの悪めのヒーローを演じるって聞いたとき、どうなるかなと思っていました。ジョンソンは肉体派で、アクション俳優という点で、アーノルド・シュワルツェネッガーに近い部分もあります。しかし、これをハッキリ言うのはどうなのかなと思うけど、ジョンソンはシュワちゃんより演技が圧倒的に上手くて良いんですよ。それを『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』という作品で強く感じましたね。ああいう細かい演技を見て「ああ、この人は演技ができるアクションヒーローなんだな」って思っていたので、『ブラックアダム』も観ているうちにスーッと役柄が馴染んできて、ジョンソンというよりはブラックアダムとして見られるようになった。やはり彼の演技力は目を見張るものがあるし、アクションヒーローとして逸材だなと感じました。

ーー『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』がジョンソン出演作の中で一番好きと伺いましたが、その理由は?

宮下:設定がとにかく面白いから「設定勝ち」みたいなところのある映画ですが、あくまでジョンソンはアバターであり、中身は子供として振る舞わなきゃいけない。割とこういう演技って違和感が出てくるものなんですよね。人の中身がまた別の人になっている、その違和感を拭うのが結構難しい中で、彼は見事に子供役を演じていました。自分の力にびっくりするっていうのが面白いですよね。普段はただ敵をバンバン投げ倒して、「そりゃあこの筋肉なら強いわなぁ」って感じなんですけど、この映画ではそんな自分に「えっ、すごい! こんな力あるんだ」って驚く演技をしているジョンソンが面白い。すごく愛くるしいんですよね、あの人って。とても愛されるマッチョだなと、あの作品で彼の演技の幅の広さをすごく感じました。

――他におすすめの出演作はありますか?

宮下:彼の出演作は『スカイスクレイパー』などいろいろありますが、僕がすごく好きなのが『セントラル・インテリジェンス』です。『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』でも共演したケヴィン・ハートと一緒に出ている作品なのですが、これも面白いです。本作はコメディ+アクションで、そのバランスがすごく良い作品だと思っています。あと、ジョンソンの愛くるしさがあるから成立している映画でもあります。ジョンソンがウエストポーチをつけながら寝るという、ただかわいいシーンにも実はちゃんと意味があったりするんです。よく作られている映画なので、ジョンソンを追いたいなって思った方にはおすすめですね。ほかにも、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』というウィル・フェレル主演の映画があって。これもコメディ映画で、うだつの上がらない、「どうせ俺たちは脇役だよな」って思っている2人の陰気な刑事の物語なのですが、その前振りとしてジョンソンがすごい刑事役で登場しているんです! 数分しか出てこないけど、その頃は彼が今ほど知られているわけではないのに、ちゃんと彼らしい“すごい刑事”として描かれている。ジョンソンが売れに売れた今だからこそ、その振りが面白いし、より楽しめるんじゃないかなと思います。あんなに贅沢なジョンソンの使い方はないでしょう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる