『シュルプ』キム・ヘスが王妃を通して見せた母親の生き様 現代に響くメッセージも
またユン廃妃と大妃(キム・ヘスク)は対照的な選択をする。テイン世子の死因が明かされたことによりユン廃妃は復権したが、息子のイ・イクヒョンが亡くなり独りになってしまった今これ以上生きる理由がない。それでもウィソン君がイ・イクヒョンの子だと知り生き抜く選択をしたのがユン廃妃で、最期まで自分の欲望にしがみついて自ら死を選んだのが大妃だ。この違いは“誰のために生きるか”である。生きるためにご飯を無理やりにでも口に運ぶユン廃妃に胸の詰まる思いだったが、どんなに苦しくても愛する我が子のために生き、死ぬ覚悟があるのならその覚悟で大切な子を守りたい母親の姿でもあった。
さて、それぞれが旅立つ時がくる。冒頭にあげたファリョンの言葉を受け止め成長した王子たち。母親のコ貴人(ウ・ジョンウォン)に1から10まで指導されていたシムソ君(ムン・ソンヒョン)は親になろうとしており、助けがなくても責任を持って育てると堂々とした姿に胸がいっぱいだ。テ昭容(キム・ガウン)とポゴム君(キム・ミンギ)は相変わらず親子の立場が逆転しているが、弱さを受け入れてくれる母親の存在を知ったポゴム君はさらに強くたくましく成長している。そしてファリョンに道を作ってもらったケソン大君は、自分らしく生きるために王宮の外というまだ見ぬ新しい世界に踏み出す決意をする。本当の自分を隠す必要のない日を自ら迎えに行くのだ。
いつの時代にも我が子のためならどこにでも駆けつけ、全てをかけて守り抜く母親がいる。だからといってそれが誰かに賞賛されるものでも歴史に遺されないものでもない。けれども目に見えないものだからこそ偉大でありどの時代にも共感を呼ぶのだろう。きっと誰もが傘という存在に守られてきた。そしていつの日か自分が大切な人の傘になることができることも教えてくれた。幼き我が子の傘となったファリョンに傘をさしたのが、自分よりも大きくなったガン(ムン・サンミン)であったように。
■配信情報
『シュルプ』
Netflixにて配信中
(写真はtvN公式サイトより)