『カーテンコール』カン・ハヌルの芝居がみんなを幸せにする? 白目を剥く迫真の演技も
「余命僅かの女性のために、孫役を演じてくれないか?」。そんな申し出を受けたらどうするだろう? Prime Videoで配信中の『カーテンコール』はカン・ハヌルが主演を務め、余命僅かな女性の“偽の孫”を演じる物語だ。(以下、第7話のネタバレあり)
韓国の巨大ホテル「楽園」の社長グムスン(コ・ドゥシム)が北朝鮮に残した離散家族の孫、ムンソン(ノ・サンヒョン)の代わりに“偽の孫”を演じるジェホン(カン・ハヌル)。そして彼の妻役のユニ(チョン・ジソ)。第7話では、グムスンがホテルで開催したお別れパーティーで、ジェホンとユニがそれぞれの知人に鉢合わせしそうになり危機一髪の展開になる。これまでジェホンの正体がバレそうになるたびにハラハラし、巧みに切り抜ける様子に胸を撫で下ろしてきた。全くの無傷ではなく、正体がバレたこともあるが、幸いのところ大事には至っていない。今回、ジェホンはどんな離れ業でごまかすのかと緊迫感が高まる。
第7話で見せた役者ジェホン、いやカン・ハヌルの演技には脱帽だ。突如、胸を押さえ呻き声を上げたかと思うと、白目を剥いて倒れこむ。端正な顔立ちで“イケメン俳優”とカテゴライズされるカン・ハヌルが白目を剥く姿には、緊迫したシーンが一転コメディとなり笑ってしまう。高まった心拍数と強張った体を、笑いで緩和してくれる緩急の妙。俳優カン・ハヌルが演じる、ジェホンの役者たる演技の見せどころだが、事態は思わぬ方向に進んでいく。
ジェホンが倒れたことで、グムスンは孫への愛情を再認識する。そして、自分の余命とジェホンの今後を思い、遺産相続人にジェホンとユニを加えて遺言書を書き換えるのだった。グムスンは家族を一堂に集め、遺産について話をする。その話を聞いて仰天するジェホンとユニと側近のサンチョル(ソン・ドンイル)。
グムスンの姿に胸を痛め、罪悪感を感じるジェホンとユニは、サンチョルに偽の孫を演じることをやめたいと告げる。しかし、サンチョルはこれまで感情を表に出すことのなかったグムスンが、ジェホンとユニのおかげで笑顔になったと言い、これまで通り孫を演じてほしいと懇願する。
一方、本物の孫であるムンソンは、北朝鮮で父ヨンフン(キム・ヨンミン)が母であるグムスンを恋い慕い、母への思慕を絶叫しながら亡くなったことをグムスンに伝えなければと韓国に渡るすべを探していた。
まだ幼いムンソンとヨンフンの壮絶な別れの場面では、父ヨンフンが幼子ムンソンを独り遺してしまうことへの恐れと不安と無念さに胸が詰まる。北朝鮮というベールに包まれた国から、世界に漏れ伝えられる情報は、恐ろしくやるせないものが多い。
『愛の不時着』で描かれた北朝鮮の人々の暮らしは、脱北者の方の話を参考にして制作されたという。世界が『愛の不時着』というフィクションを通じて北朝鮮に住む、市井の人々の暮らしを垣間見たことで、かの国が困窮し抑圧されていることを想像させられた。本作でもまた、北朝鮮での描写は痛ましく、辛いものだ。本物のムンソンが祖母グムスンに父の無念と母への思慕を語るとき、分断国家の人々が抱えてきた悲劇をわたしたちは知ることになるだろう。