『シュルプ』キム・ヘスが王妃を通して見せた母親の生き様 現代に響くメッセージも

『シュルプ』キム・ヘスが見せた母親の生き様

「心配いりません。もうこの手をお離しください」

 これは四男ケソン大君(ユ・ソンホ)の言葉だ。子は遅かれ早かれいつの日か親元を離れる。けれど、子どもたちの旅立ちがこんなにも寂しくて温かくて、あんなにも眩しいだなんて。最終回を迎えた『シュルプ』(Netflixで配信中)は物語が終わる瞬間まで、王妃イム・ファリョン(キム・ヘス)のどこまでも深く大きな愛に包まれていた。

 時代劇でありながら現代に生きる人々にも多くのメッセージを届けてくれた本作。ファリョンの言葉は私たちの心さえも守ってくれていたように思う。母親たちには「母親だから、大人だからと言って常に正しいということはない」と寄り添い、時には「子の過ちを叱れる母親になれ」と叱り、子どもたちには「他人と異なるものを抱えていても隠す必要のない日が訪れるはずだ」と苦しみを受け止め、「己が満足なら完璧でなくても幸せに生きられる」と励まし、「つらければつらいと言っていい。心が痛いなら痛い素振りをみせなさい」と弱さをみせることを教えてくれた。

 最終話は欲に溺れた者、復讐に生きた者がエンディングを迎える。テイン世子をはじめ兄弟が皆殺しにされ、母親のユン廃妃(ソ・イスク)と生き残ったイ・イクヒョン(キム・ジェボム)は謀反を起こすために生きてきた。ところが、復讐の先にあったのは権力や欲望ではなかった。彼の願いは老母と息子との平凡な生活、つまりユン廃妃とウィソン君(カン・チャニ/SF9)と家族で暮らす当たり前にある幸せだったのだ。奪われたものを取り返すために多くの罪を重ねてしまったイ・イクヒョンの人生は虚しくも哀しい結末となってしまう。

 ファン淑媛(オク・ジャヨン)は愛する人に騙された上に自分の父親を殺され、さらに息子が自分の父親を殺してしまうという展開に精神的に大きな打撃を受ける。母親を支えていかなければならなくなったウィソン君。王宮にいた時とは比べものにならないほどみすぼらしい生活をしている2人だが、ファン淑媛は息子の手が温かかったことを知り、ウィソン君は自分の手が温かかったのだと気づく。本当の意味で親子として支え合っていく様子をファリョンはしっかりと見守っていくのだろう。

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