『チェンソーマン』マキマとコベニの“本領発揮”が怖い 加速するアクションとゴア描写

 「血がいっぱい出ていて良い。みんなうまい!」。8月、アニメのPV映像とメインキャストが発表された際に原作者の藤本タツキがこのようなコメントを残していたことを、ふと『チェンソーマン』第9話「京都より」を観て思い出した。原作でもお馴染みの血まみれな展開のインパクトに、ただ目を見張る回であった。

『チェンソーマン』第9話「京都より」予告&先行カット公開 サムライソードがデンジを斬る

テレビ東京系ほかにて放送中のTVアニメ『チェンソーマン』第9話の予告映像と先行カットが公開された。   『少年ジャンプ+』…

※本稿にはアニメ『チェンソーマン』第9話までのネタバレが記載されています。

 “first death”こと姫野の死をきっかけに、一気に人が死に始めた『チェンソーマン』。冒頭では第8話のように、再び彼女の死の瞬間が描かれる。気になったのは、そのセリフの言い方や幽霊の悪魔の死の映し方が違う点。何となく、第7話と第8話でデンジと姫野それぞれのPOVが描かれたこともあったからか、再び視点の変換が行われたようにも思える。前回が姫野の主観を交えた彼女サイドのものだったのに対し、今回はアキ側から受け取った先輩の死の瞬間だったのだろうか。

 姫野の契約していたゴーストが、最後の力で奮い起こさせたデンジ。サムライソードとの戦闘シーンは3Dを使った迫力満載のものとなっていたが、それをより際立たせていたのは作画以上にカメラアングルの動きだったかもしれない。砂ぼこりの演出はコウモリの悪魔戦の時も印象的だったが、今回はさらに柔らかく繊細なその表現が、戦う二人の異質感を強調させる。しかしその戦いも、サムライソードがデンジを盾にとっていた仲間ごと一瞬で真っ二つにしてしまったところで、終了。原作でも突然上半身と下半身が分かれるシーンはショッキングだったが、アニメはより固定したカメラの中で切られたことに気づかないデンジを映し続け、唯一その体がずり落ちる“動”を際立たせていた。原作未読だったら悲鳴をあげていたに違いない。

 今回は、それに始まるゴア描写がとにかく強く、全面的に映し出されていた。特筆すべきは(もちろん、生きていた)マキマの驚くべき能力。暗殺した男たちの背後に立つ姿なんて、背景に流れる劇伴も含めて完全にホラーだし、その男たちの死体の胸元に大きな“空洞”ができていたことにも注目したい。京都駅では迎えにきた京都公安のデビルハンター黒瀬&天童に「自分は撃たれなかった」と嘘をついたことも、彼女の怪しさを一層引き立たせる。今回、マキマが黒瀬に頼んだ終身刑以上の犯罪者の護送シーンがアニメオリジナルで描かれたことによって、彼ら側の「これから俺たちは何をされるのか」という、得体の知れなさへの恐怖も感じられた。何より、彼らに段ボールいっぱいのパンなどを用意して食べさせる “最後の晩餐”シーンの悪趣味さなどを含め、こういったアニオリ描写が『チェンソーマン』はとにかく良い。

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