生田絵梨花、『PICU』で光る“等身大”の演技 乃木坂46から親しみのある名女優に?

生田絵梨花、『PICU』で光る演技力

 『PICU』は優しいドラマだが、命が関わる非常に辛いドラマでもある、そこで生田はいかに“平常な人”を演じるか。このドラマの一つの肝は、武四郎と南の親子の関係だ。よくある親子と一緒で、親子だからこそぶっきらぼうで、変に心配させたくないし、恥ずかしいから弱音を見せたくない、もしくは本音を見たくないというのもあるだろう。ただ根底には幼少期に父親を亡くし、女手一つで息子を育て上げた母親と、そんな苦労を見てきた武四郎は母親を安心させるため医師を志した。しかも2人暮らし、見えない愛情が深い絆で結ばれている。この親子関係の間に、桃子は親戚のように自然と溶け込んでいる。武四郎の家にいて、武四郎が帰ってくると「おかえりー」と言える自然さ。それだけ近い関係だからこそ、母親に本音が言えないように、桃子に告白できなかったのだろうか。南にとっては娘のような存在で、唯一心が許せる親友だ。親友というのもまた、本音は照れ臭くて隠したいものだが、相手の気持ちを察して心配する思いは親子以上。そうした関係性を生田は自然に演じていく。

 武四郎は医師なのに母の癌に気づかなかったことに後悔し、医師だからこそ未来が分かってしまう。仕事のことで頭がいっぱいで、母親にまで気が回らなかった。そして、南は息子に気を遣わせたくなかった。桃子は両方の思いが分かるから自然と涙が溢れ、南の病気のことを知って「武ちゃんのお母さんだけどさ、それだけじゃないから、南ちゃんは南ちゃんだから。なんかあったらすぐ連絡して」と心配の感情を必死に柔らかい表情にして声をかける。そして南が「なんでうちにお嫁にきてくれなかったんだろう、こんな素敵な娘さん」と言うと、涙をこらえて「バカ言いなさんな」と、照れなど様々な感情が詰まった表情を見せる。

 この1シーンだけでも、かけがえのない関係性を視聴者に感じさせる名演技を見せる。元々、表情や眼差しで感情を伝える演技が上手だが、人を丁寧に描く今作だからこそ、生田の魅力が十二分に引き出されているのかもしれない。もしかしたら、生田自身がドイツ生まれのお嬢様育ちで、演技ではなく人として滲み出る心の余裕が、桃子の“いい人感”を自然と醸しているのかもしれない。それだけに、“妊婦役”ということが引っかかる。武四郎は、母の病気のように、桃子の妊娠も気付くのが遅かったが、そうした武四郎の後悔を強調する為のものなのか? 本当に観ていてやるせない気持ちにさせるが、今後、この桃子の妊娠もPICUと絡んできてしまうのだろうか。

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 生田は、感情を表情に乗せて伝えることが上手い女優であり、等身大の役になればなるほど自然にそれを見せてくる。『PICU』で日本を代表する演技派女優の大竹しのぶと共演したことは大きな経験となったはず。今後もミュージカルではヒロインとして歌い上げ、ドラマでは高畑や上白石姉妹のように親しみのある名女優になっていくだろう。

■放送情報
『PICU 小児集中治療室』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:吉沢亮、木村文乃、安田顕、生田絵梨花、高杉真宙、菅野莉央、甲本雅裕、中尾明慶、高梨臨、菊地凛子、正名僕蔵、松尾諭、大竹しのぶほか
脚本:倉光泰子
演出:平野眞
プロデュース:金城綾香
医療監修:浮山越史(杏林大学病院)、渡邉佳子(杏林大学病院)
主題歌:中島みゆき「俱に」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
音楽:眞鍋昭大
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/PICU/
公式Twitter:@PICU_cx
公式Instagram:@picu_cx

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