『アークナイツ』映像演出面で意識したこととは? 渡邉祐記監督がこだわりを明かす
現在放送中のTVアニメ『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』より、渡邉祐記監督のインタビューコメントが公開された。
本作は、アプリゲーム『アークナイツ - 明日方舟 -』を原作とした“シネマティックアニメーション”。一般的な作品の画面比率である「16:9」よりも横長な「2:35:1」のシネマスコープサイズの画面比率を採用し、さらに、「5.1ch サラウンド」音声規格にも対応している。
原因不明の天災が各地で不規則に発生しているテラの大地。大多数の人々は天災から逃れるために、長い年月を経て開発された移動都市で暮らすようになった。天災の跡地に残された莫大なエネルギーを持つ源石は、文明の飛躍的な進歩に寄与する一方、不治の病である鉱石病をもたらす。鉱石病の感染者は徐々に体が結晶化し、死亡時に新たな感染源となることから、各国で隔離や強制労働の体制が敷かれ迫害の対象となるのだった。抑圧を受けた感染者は反旗を翻し、鉱石病の治療法を研究する製薬会社“ロドス・アイランド”は、病から全ての人々を救うために武器を取り、自らの征くべき道を進む。
渡邉監督はTVアニメ化にあたり「既に原作をプレイされている方とアニメから『アークナイツ』を初めて知る方、双方に同じくらい楽しんでいただける作品にする、という点」と意識したポイントを明かす。
「1クール作品での監督経験は初めてで、30分枠の作品でコンテを描いたことも無かったため、自分にとっては作業の全てが挑戦ということになるかもしれません。特別意識したこととしては、既に原作をプレイされている方とアニメから『アークナイツ』を初めて知る方、双方に同じくらい楽しんでいただける作品にする、という点です。メディアミックス作品は如何に原作の魅力を広く伝えるかが至上命題と考えているので、既存プレイヤーの方には原作の雰囲気を可能な限り再現した映像を見ていただきつつ、ゲームをプレイしていない方にも映像を通して疑似的にドクターやアーミヤたちの状況を追体験してもらう作りを意識しています。映像の流れ(テンポ)を止めてしまいがちな『心の声』であったり、以前の出来事を視聴者に思い出してもらうための説明的な回想はなるべく排除し、キャラクターたちの視点に自然と立って、物語を追っていけるような映像を目指しました」
映像演出面では、「実際に現場にいたらどんな景色を見ることになるのかという点を意識した」とこだわりのポイントを語る。
「前述のように、ドクターたちが置かれている状況を追体験してもらうため、実際に現場にいたらどんな景色を見ることになるのかという点を意識しました。美術・色彩・撮影の各工程の方々と画面の最終的なルックを相談するうえで、原作イラストのもつ埃っぽさ、冬の冷たさ、天災が迫る大気の状態など、観ただけでそこにある空気の質感が分かるようにしたいと話していました。視聴者の方々にも登場人物たちと同じ景色を見て、同じ空気を吸い、同じ危機感を肌で感じてもらうことでより深く作品に没入してもらうという狙いです。一般的なアニメ作品では、キャラを引き立たせるために周囲の環境を整える表現が多いですが、この作品ではおそらく他では許されないくらいキャラが風景に溶け込む画面になっていると思います。原作シナリオでも人間ひとりひとりの非力さや無力さについてたびたび言及されていますが、その価値観に沿う形で主人公もモブのレユニオン兵も例外なく、ひとりひとりがあくまでテラという世界の中に立っているだけの存在であることを意識しました。各工程の方々の素晴らしい作業のおかげで、ドクターたちがどんな場所で活動しているのかがとても明確になったと思います」
放送は第5話までが終了。後半のポイントを渡邉監督は次のように語る。
「少しずつ登場人物も増えてここから関係性がより複雑になってゆき、キャストの皆さんの素晴らしい演技を沢山見ることができると思います。舞台も変わり、スラム街などそれぞれの場所の映り方や効果音・BGMもシチュエーションに合わせて少しずつ変化していくので、注目してみてください。また、第1話から展開の種を少しずつ蒔きつづけていて、キャラの描き方やセリフのひとつひとつが最終回に向けて収束していきます。序盤話数の時点では、原作を知る人と知らない人で作品の見え方が大きく異なっていたと思いますが、そのギャップがおそらく最終回を迎える頃には埋まり、原作をプレイしている人もアニメだけを見ている人も大体同じような顔のまま見終えることになるのではないかと思います。是非最後までご覧ください」
『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』第6話は、12月2日に放送される。