鈴木亮平、『エルピス』で演じる“最低で最高な男” 斎藤は恵那にとって最大のトラップ?

『エルピス』鈴木亮平の“最低で最高”な魅力

 あの斎藤特有の強引さの発揮しどころをよくわかっており、決してそのポイントを間違えない安定感は何なのだろうか。情事を終えた後、スーツを着て恵那の頭を撫でていくあの去り際の一連の動作も、こちらから何か迂闊に声を掛けようものなら、それ以上うっかり何かを欲しがってしまえば野暮になってしまうと、自然とこちらから譲ってしまい沈黙させられる。

 しかし、これまでここまで職場や社会における女性の味方とも敵とも言い切れぬ存在、思わぬトラップを見事描いている作品があっただろうかと唸らされる。

 斎藤のスマートさは演じる鈴木のインテリジェンスあってこそだろう。映像美もありつつ陰影まで美しく光と影のコントラストが見事だ。鈴木といえば、映画公開も控えている日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)での救命医療医の喜多見幸太役を筆頭に、大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)での主人公・西郷隆盛はもちろん、『テセウスの船』(TBS系)での警官・佐野文吾役、映画『俺物語!!』でのピュアで猪突猛進な剛田猛男役など、利他的で使命感の強い真っ直ぐな役どころの印象が非常に強い。いわゆる太陽のようなヒーローが本当によく似合う。

 それが本作では大人の色気と得体の知れなさ、底知れなさを同時に漂わせ、鈴木でなければここまで恵那の心に棲み着く斎藤にはなれなかっただろうという確信を多くの視聴者に抱かせている。確かに鈴木にはどの役柄の際にも、その笑顔を見るとこちらが安堵させられ泣きたくなってしまうような不思議な引力があり、この人なら受け入れてくれそうだと自らを委ねたくなってしまう深い深い受容力が滲むのだ。斎藤という男にもこの側面がどこか見え隠れするからこそ、彼のことをただの“クズ男”だと一蹴してしまえない自分に気付かされてしまうのだろう。

 これから斎藤がどう恵那と拓朗に関わってくるのか。この冤罪疑惑事件について何を知っていて、誰のどんな事情を守ろうとしているのか。恵那同様に疑う気持ちを抱きながらも、「今夜行っていい?」というあの業務連絡のような斎藤からのメールをどこかで期待してしまっている自分がいることを自覚せずにはいられない。

■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv

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