『Dr.コトー診療所』は何年経っても色褪せない 時代を先取りしていた“へき地医療”の問題

時代を先取りしていた『Dr.コトー』

 東京から故郷の北海道に戻ってきた黒板五郎(田中邦衛)が息子の純(吉岡秀隆)と娘の蛍(中嶋朋子)と共に、大自然の中で暮らす姿を描いた『北の国から』は、1981〜1982年に連続ドラマが作られて以降、定期的にSPドラマが作られた、熱狂的な支持を集めた国民的ドラマだった。

 本作は子役として純と蛍を演じた吉岡秀隆と中嶋朋子が大人に成長していく過程を記録したドキュメンタリーとしての側面も強く、二人が成長すると青春ドラマへと変わっていった

 子役時代から活躍する吉岡は『北の国から』の他にも、山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズにも、寅さん(渥美清)の甥っ子の諏訪満男として第27作から出演していた。おそらく当時の大人は息子を見守るような気持ちで吉岡を見ていたのだろう。

 そんな吉岡が30代になった2002年に『北の国から』は終わったのだが、当時の視聴者には「純のその後を見たい」という気持ちが残っており、その期待に答えたのが『Dr.コトー診療所』だったとも言える。

 倉本聰が主催する富良野塾出身の吉田紀子が脚本を担当していることもあってか、『Dr.コトー診療所』を観ていると『北の国から』を思い出すことが多い。中でも漁師の原剛利(時任三郎)と息子の剛洋(富岡涼)の父子は、五郎と純の姿と重なる。

 さながら、『北の国から』に対する“南の国から”とでも言うようなドラマだが、『北の国から』にあった、自然を背景にした人間ドラマの魅力を、引き継いだのが『Dr.コトー診療所』だった。

 最後に本作は、医療機関の利用が困難な市町村の抱える「へき地医療」の問題を描いていた。

 少子高齢化による人口減少は日本全体で起きており、過疎地域と呼ばれる市町村は年々増えている。公共交通機関の縮小、建物の老朽化。そして、病院や診療所といった医療サービスの減少。

 『Dr. コト―診療所』の志木耶島はコミュニティが機能していたため、島民たちが団結して支え合えば乗り越えられるという、希望が前向きな形で描かれていたが、少子高齢化の荒波は日本中のコミュニティのあり方を変えてしまう。

 あと数十年も経てば全国の市町村が、地縁共同体の機能しない「志木那島」のような状態となっていくことは、誰の目にも明らかだ。その意味で『Dr. コト―診療所』で描かれたことは、テレビシリーズが放送された2000年代以上に切実な問題となっている。

 放送当時は、離島を舞台にしたヒューマンドラマという印象が強かった『Dr. コト―診療所』だが、現在の視点で振り返ると、高齢化による市町村の過疎化による「へき地医療」の問題という、日本が直面している問題を先駆けて描いた医療ドラマだったことがよくわかる。今こそ観直されるべきドラマだ。

『Dr.コトー診療所』コンプリートBlu-ray BOX

■リリース情報
『Dr. コト―診療所 コンプリート Blu-ray BOX』
発売中

○Blu-ray BOX[8枚組:本編Blu-ray8枚]
価格:38,500円(税込)
本編:1578分(予定)
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン

●収録内容
『Dr.コトー診療所』(全11話)
第1話「そこに、人が生きている」/第2話「故郷で暮らす母へ」/第3話「赤ちゃんを助けて」/第4話「病気を診るな、人を診ろ」/第5話「手術で治せない病」/第6話「愛するわが子へ」/第7話「巣立ち」/第8話「救えない命」/第9話「暴かれた過去」/第10話「この島を出て行け」/最終話「新たな旅立ち」

『Dr.コトー診療所特別編』(全2話)
第1夜/第2夜

『Dr.コトー診療所2004』(全2話)
前編/後編

 『Dr.コトー診療所2006』(全11話)
第1話「二人の約束」/第2話「それぞれの門出」/第3話「忘れられた記念日」/第4話「父のあやまち」/第5話「荒海に漂う命」/第6話「帰るべき場所」/第7話「命の期限」/第8話「幸福への決断」/第9話「愛を乞う者」/第10話「切り裂かれた夢」/最終話「医師の宿命」
※収録内容、仕様等は予告なく変更になる場合あり

『Dr.コトー診療所/Dr.コトー診療所特別編』
出演:吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、石田ゆり子、千石規子、泉谷しげる、筧利夫、小林薫
原作:山田貴敏『Dr.コトー診療所』(小学館「ビッグコミックオリジナル」)
脚本:吉田紀子
脚本協力:永田優子(特別編のみ)
企画:杉尾敦弘
プロデュース:土屋健
演出:中江功、小林和宏、平井秀樹
音楽:オリジナルサウンドトラック『Dr.コトー診療所』(ポニーキャニオン)
主題歌:「銀の龍の背に乗って」中島みゆき(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)

『Dr.コトー診療所2004』
出演:吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、千石規子、泉谷しげる、筧利夫、小林薫
原作:山田貴敏『Dr.コトー診療所』(小学館「ビッグコミックオリジナル」)
脚本:吉田紀子
企画:杉尾敦弘
プロデュース:土屋健
演出:中江功
音楽:吉俣良
主題歌:「銀の龍の背に乗って」中島みゆき(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)

『Dr.コトー診療所2006』
出演:吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、蒼井優、泉谷しげる、筧利夫、小林薫、桜井幸子、大森南朋、朝加真由美、富岡涼、堺雅人
原作:山田貴敏『Dr.コトー診療所』(小学館「ビッグコミックオリジナル」)
脚本:吉田紀子
プロデュース:中江功、増本淳、塚田洋子
演出:中江功、平井秀樹、高木健太郎
音楽:オリジナルサウンドトラック『Dr.コトー診療所2006』(ポニーキャニオン)
主題歌:「銀の龍の背に乗って」中島みゆき(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
©山田貴敏/小学館
©フジテレビ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる