『エルピス』敵はどこに? “恵那”長澤まさみと“拓朗”眞栄田郷敦が向き合う正しさの代償

『エルピス』恵那たちが向き合う正しさの代償

 打ちのめされた恵那の元に、追い打ちをかけるかのように斎藤(鈴木亮平)がやってくる。「君の世界は君を中心に回ってるんだな」「たまたまタイミングが重なっただけ」と話す斎藤は、この世界の“現実”を恵那に説き聞かせる。部屋を訪れた理由を尋ねられ、「知らない方がいいこともある」と言ってやんわりと脅す斎藤を受け入れてしまう恵那。自分は間違っていないとわかっていても抗えない。恐怖から斎藤に庇護を求める恵那の心理を否定することは簡単だが、同じシチュエーションで私たちに何ができるだろうか。権力と対峙した恵那は深淵に触れてしまったのだ。

エルピスー希望、あるいは災いー

 拓朗の場合、恵那とは少し事情が違う。保身から冤罪事件に手を出した拓朗は徐々に事の重大さに気づいたが、「正しいことがしたい」という渇望は内なる罪の意識に根差しており、事件の真相に近づくことは自身の過去に向き合うことと同義だった。自らの変化を自覚し、勝ち組にいることへの疑問を口にする拓朗に、村井は容赦ない真実を突きつける。村井が見せたのは明応の校舎。拓朗が学生時代を送ったそれは、拓朗の罪を示す十字架だ。「お前はどのポジションにいるやつだったの?」「自分が何に負けてきたか向き合え。それができない限り、お前は一生負け続けるぞ」。親友を裏切った拓朗は「決定的に負けた」のであり、一度も勝っていないと村井は言おうとした。

エルピスー希望、あるいは災いー

 冤罪を掘り起こすことで恵那は自らの弱さに直面し、拓朗は自身の罪と向き合うことになった。裁くという行為に内在する牙が人をすくませ、罪を自覚させる。正しさを求めることは、自らに正しさを強いる点で厳しいものである。多くの人はそれを直視せず、ほどほどにやり過ごすが、そうすることで自らの間違いも赦されると考える。しかし、それは問題を棚上げしているだけだ。寛容さと正しさの両極をすさまじい速度で行き来する『エルピス』はそのことを明らかにする。

■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv

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