『一橋桐子の犯罪日記』が描く“繋がる”ことの幸せ 『万引き家族』と重なる疑似家族

『一橋桐子』が描く“繋がる”ことの幸せ

 万引き、紙幣偽造、泥棒、結婚詐欺。あの手この手で刑務所に入ろうとするも、一向に成功しない。そんな矢先にアパートの立ち退きを求められ、まさに絶体絶命の桐子(松坂慶子)が誘拐に挑んだ『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合)第4話。かつてこんなに誘拐をコミカルに描いた作品があっただろうかーー。

 余生を刑務所で過ごすため、“ムショ活”に励んでいる桐子。「できるだけ人に迷惑をかけずに捕まる道」を模索する彼女だが、これが意外と難しい。本来、犯罪は命や財産、尊厳、時間など、誰かの大切なものを奪う行為だ。心優しい桐子はそれができず、結局は目的よりも目の前の人の幸せを願ってしまう。

 高利貸しの寺田(宇崎竜童)も、結婚詐欺師のゆかり(木村多江)も、ムショ帰りの久遠(岩田剛典)も、みんなちょっとずつ彼女に救われてきた。桐子は奪う人ではなく、与える人なのだ。今回の誘拐も自分のためというよりは、雪菜(長澤樹)のため。彼女がプロサーファーになるという夢を父親に認めてもらえるよう、桐子は一世一代の大勝負に出る。

 とはいえ、雪菜の父・和也(神尾佑)は刑事。少しでも計画に粗があったらすぐに狂言誘拐であることがバレてしまう。刑事のイメージが『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)で止まっている桐子と、高校生の雪菜だけで実行するには心許ない。二人は久遠と寺田にも協力を仰ぎ、「プランK」と名付けた誘拐計画を練っていく。

 まずは、雪菜を自宅に監禁。脅迫電話をかけ、桐子が働くパチンコ屋での身代金の受け渡しを支持する。内容だけを聞くと恐ろしいが、本人たちはまるで誕生日のサプライズ計画を立てているかのように楽しげだ。当日も久遠と寺田が迫真の演技で和也の動きをコントロールしながら、計画通りに事が運んでいく。このままでは、本当に桐子が捕まってしまうのではないかと思われた。

 「プランK」はおおよそ完璧だったが、一つだけ思いもよらぬ穴があった。それは雪菜が考えた脅迫の内容だ。

「言われた通りにしないと、娘は東京湾に沈んで魚の餌になる」

 これは雪菜が幼い頃、和也との“誘拐ごっこ”で使っていた台詞だった。そのため、和也は今回のことは警察沙汰にせずに、雪菜の狂言に付き合っていたという。計画は失敗に終わったどころか、雪菜が注目を集めるためにネットで助けを求めたことで、桐子たちは世間から迷惑YouTuberさながらの扱いを受けるように。

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