『一橋桐子の犯罪日記』岩田剛典が体現する人生の苦味 “孤独”を埋めていく桐子の未来は?

『一橋桐子』岩田剛典が体現する人生の苦味

 街コンや婚活パーティー、マッチングアプリなど、近年は結婚相談所よりもカジュアルな出会いの場が溢れている。高齢者を対象にした婚活イベントも充実しており、いくつになっても恋を楽しむことが可能になった。だが、それは“結婚詐欺師”にとっても美味しい状況だ。大勢の中からターゲットとして優れた人を見つけ出せるのだから。

 『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合)第3話では、桐子(松坂慶子)が結婚詐欺に挑戦。いつもは久遠(岩田剛典)が桐子の犯罪アドバイザーだが、今回は“女性のためのセミナー”と称して、受講生たちに結婚詐欺の秘訣を教えるゆかり(木村多江)がその役割を担う。彼女は桐子が憧れる三笠(草刈正雄)からお金を搾り取った“薫子”だ。

 木村多江はまるで一人二役を演じているかのよう。セミナー講師のゆかりでいる時はスタイリッシュな服に身を包み、表情もキリッとして華やか。しかし、薫子として婚活の場に出たら、どこか野暮ったく頼りない印象になる。

 結婚詐欺師と聞けば、誰もが前者のように洗練された人を思い浮かべるが、実態は後者のようなごく普通の人であることが多い。そういうふうに振る舞う方が安心感を与えられるのもあるけれど、一番は相手の庇護欲を駆り立てるから。誰かに必要とされたいと感じている人にとって、自分がいなきゃダメだと思わせてくれる相手は救世主みたいなものだ。

 その点、お金も身寄りもない桐子は結婚詐欺師に向いていると言えるかもしれない。ただ、彼女の場合は恋愛経験のなさがネックとなる。ゆかりのアドバイスを単になぞるだけの桐子は、婚活パーティーでも婚活ツアーでも失敗ばかり。そんな中、思いがけず福森(長谷川初範)というスマートで素敵な男性と出会い、“オイルショックぶり”のデートをすることになる。

 デートも成功し、無事にお金を騙し取れそうになるもイマイチ悪女になりきれない桐子。そう、彼女が結婚詐欺に向いていない一番の理由は良心が残っている点にある。親切にしてくれる福森の優しさに、失恋のショックから以前の快活さを失った三笠の孤独に出会うたび、桐子の心は痛む。

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