『サイバーパンク:エッジランナーズ』ほど完璧なゲームのアニメ化はない!
ゲーム原作の作品を映像化するにあたって大抵の場合は翻案が必要となり、ゲームの世界を完全再現、というわけには中々いかない。しかし、『サイバーパンク:エッジランナーズ』で描かれるナイトシティは、隅から隅まで『サイバーパンク2077』の世界が完璧に再現されており、翻案にあたってスポイルされた要素が全く見当たらない。デイビッドとその母親が住んでいるアパートはゲーム主人公のVが住むアパートと全く同じ間取りだし、第1話でデイビッドがブラブラ歩く街並みは、確かに筆者が『サイバーパンク2077』でハンドルを切り損ねて人を轢いてしまった場所だ。それだけでなくホロコールの着信音やレキシントンの銃声まで、ゲームと全く同じ効果音が使われている。視覚と聴覚が同時に刺激され、はじめて『サイバーパンク2077』をプレイした時の感動が蘇る。原作を完璧に再現していない映像化作品はクソだ、という意見には大いに異を唱えたいが、かといってこれほど完璧に世界観を再現したTRIGGERの手腕には感動せずにいられない。
だからこそ柄にもなく断言させてもらうと、『サイバーパンク:エッジランナーズ』を既に観賞し、猛烈に感動したという人は『サイバーパンク2077』をやらない、という手はない。既にプレイした者にとって『サイバーパンク:エッジランナーズ』はゲームの世界を完全再現したアニメーション作品だが、先にアニメを観た人にとっては『サイバーパンク2077』こそあの最高のアニメの世界を完全再現したゲームなのだ。世界広しと言えど、ジャパニメーションのゲーム化で、AAA級のオープンワールドRPGとなった作品は今までなかったと思う。そういう視点で楽しめば、きっと今までにないゲーム体験となるはずだ。雑多で入り組んだ街並みはその圧倒的な情報密度によって歩くだけで楽しい。キャラクタービルドではコンビニに行くような気軽さで肉体をクローム(機械)に換装することができる。町ゆく人々は愚かで逞しく、大抵の場合は短命だ。ああ、ここはデイビッドとルーシーが駆け抜けたナイトシティなのだと実感できる。
そもそも本作がゲームの世界を完全再現できているのは、『サイバーパンク2077』がオープンワールドとして圧倒的情報密度を誇るからこそだと言える。『サイバーパンク:エッジランナーズ』という最高の作品は、CD PROJEKT REDとTRIGGER。ゲームとアニメ。全く異なる業界を代表するスタジオが起こした化学反応なのだ。ゲームをプレイした人はアニメを、アニメを観た人はゲームを、そうやってきっとまたナイトシティに帰りたくなる。ちなみに本作で印象的に使われる「I Really Want to Stay at Your House」という曲は、元々ゲームに実装されているラジオから流れる一曲だったりする。そのためプレイ中にふと流れたりして、デイビッドとルーシーの事を思い出して泣きそうになる。そんな一幕があった。しかも通りすがりのギャングをサイバーサイコにして仲間を襲わせる、というアニメ観賞者にあるまじき非道なことをしている最中だったため殊更泣けた。そんな今までにない体験ができる『サイバーパンク2077』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』は併せてオススメしたい。
■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『サイバーパンク:エッジランナーズ』
Netflixにて独占配信中
監督:今石洋之
副監督:大塚雅彦
キャラクターデザイン:吉成曜、金子雄人
クリエイティブディレクター:若林広海
シリーズ構成:宇佐義大
原案:CD PROJEKT RED
脚本:宇佐義大、大塚雅彦
劇伴制作:山岡晃
アニメーション制作:TRIGGER