『一橋桐子の犯罪日記』が映し出す現代人の“寂しさ” 松坂慶子、岩田剛典らの演技に唸る

『一橋桐子』が映し出す現代人の“寂しさ”

 桐子(松坂慶子)の行動力は一体どこまで加速していくのだろう。

 亡き親友・知子(由紀さおり)との「笑って長生きする」という約束を果たすため、刑務所を終の住処とすることを決めた桐子。決して一筋縄ではいかない“ムショ活”が、彼女を思わぬ場所へと導いていく。

 『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合)第2話のタイトルは「悪人は成敗すべし」。桐子は水面下で闇金業を営む寺田(宇崎竜童)の事務所に清掃員として潜入し、大金を盗み出す作戦に出た。

 友(トモ)なし、金なし、身寄りなし。すべての希望を失い、ただ涙に暮れていた彼女はいずこへ。周囲に恐れられている上司の久遠(岩田剛典)にも臆することなく犯罪についての教えを請い、彼に紹介された女子刑務所の卒業生である姫野(遊井亮子)にも参考がてら会いに行く。

 その足取りが軽くなるたび、桐子の中でも変化が生まれ始めた。一番変わったのは、刑務所に入る目的だ。最初はあくまでも「死ぬまで生活を保障してもらうため」だったはず。それがいつしか姫野と同じように美容師の資格を取り、「人生をやり直すため」になった。本人が気づいているか否かは分からないが、もう桐子は終わりを待つだけの人ではないのだ。

 そこには、 孫ほど歳の離れた女子高生・雪菜(長澤樹)の存在も影響を与えている。桐子のムショ活を当初は阻止しながらもその胸の内を知り、「本気ならすぐ諦めちゃ駄目」と背中を強く押してくれた雪菜。それは彼女自身にも、誰にも応援されない夢があったから。いつかサーファーとして本場のハワイでビックウェーブに乗る。そのために、どんな波にも恐れず立ち向かう姿は桐子に勇気を分け与えた。

 桐子も与えてもらってばかりかといったら、そうとも限らない。家にも学校にも存在しない居場所を雪菜は桐子に求めているような気がする。ふたりの間に芽生えつつある疑似家族的な繋がりは、姫野曰く刑務所内にもあったそうだ。

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