もはや誰も無傷ではいられない 凄惨なファミリードラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は家族ドラマ

 レイニラは死の床にある父の傍らで、対立を生むばかりの王位継承はあまりにも荷が重いと涙をこぼす。伝統に逆らい、女子を後継者に選んだヴィセーリスを突き動かしてきたのは一族の始祖、征服王エイゴンから伝わる『氷と炎の歌』だ。いつか北から現れる脅威を前に、“約束された王子”が世界を団結させるというエイゴンの予知夢が、『ゲーム・オブ・スローンズ』で描かれた人類とホワイトウォーカーの戦い、ジョン・スノウの登場である事は言うまでもないだろう。

 ところがアリセントにはこれが全く別の言葉として聞こえてしまう。異なる思想を持つ者には共存の言葉もすれ違うのか、本シリーズらしいあまりにもアイロニックな無情さという他ない。今際の際、ヴィセーリスは枕元のアリセントを我が娘と思い込み、エイゴンの『氷と炎の歌』が真実であると告げる。それは長男エイゴン(偉大な始祖にちなんで名付けたのだろう)こそが約束の王子であり、彼を即位させるのはアリセントしかいないと伝わってしまうのだ。

 『ゲーム・オブ・スローンズ』のセオリー通りなら次回、第9話が最もショッキングな事件の起こる重要回となるのは間違いなく、監督を今シーズンベストの第4〜5話を手掛けたクレア・キルナーが務めることからも期待は高まる。ヴィセーリス王の死によって、物語はいよいよ王位継承という重大局面を迎える。もはや誰も無傷ではいられないのだ。

■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
U-NEXTにて配信中
出演:パディ・コンシダイン、マット・スミス、オリヴィア・クック、エマ・ダーシー、スティーヴ・トゥーサント、イヴ・ベスト、ファビアン・フランケル、ソノヤ・ミズノ、リス・エヴァンス、ミリー・オールコック、ベサニー・アントニア、フィービー・キャンベル、エミリー・キャリー、ハリー・コレット、ライアン・コア、トム・グリン=カーニー、ジェファーソン・ホール、デヴィッド・ホロヴィッチ、ウィル・ジョンソン、ジョン・マクミラン、グレアム・マクタヴィッシュ、ユアン・ミッチェル、テオ・ネイト、マシュー・ニーダム、ビル・パターソン、フィア・サバン、ギャビン・スポークス、サバンナ・ステイン
日本語吹替版キャスト:早見沙織(レイニラ・ターガリエン役)、津田健次郎(デイモン・ターガリエン役)、堀内賢雄(ヴィセーリス・ターガリエン役)、大塚芳忠(オットー・ハイタワー役)、坂本真綾(アリセント・ハイタワー役)、大塚明夫(コアリーズ・ヴェラリオン役)、田中敦子(レイニス・ヴェラリオン役)、諏訪部順一(クリストン・コール役)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・共同ショーランナー・製作総指揮・脚本:ライアン・コンダル
共同ショーランナー・製作総指揮・監督:ミゲル・サポチニク
製作総指揮・脚本:サラ・ヘス
製作総指揮:ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミット
監督:クレア・キルナー、ジータ・V・パテル
監督・共同製作総指揮:グレッグ・ヤイタネス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
原題:House of the Dragon
翻訳:川又勝利、佐々井朝衣
©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
公式サイト:https://www.video.unext.jp/title_k/house_of_the_dragon

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