『祈りのカルテ』患者と真摯に向き合い続ける玉森裕太 研修医たちの青春群像を描いた物語
Kis-My-Ft2の玉森裕太が主演を務める『祈りのカルテ〜研修医の謎解き診察記録〜』(日本テレビ系)が10月8日にスタートした。知念実希人の小説を原作に、脚本には根本ノンジ、演出には狩山俊輔と池田千尋。主人公の玉森をはじめ、研修医の同期には池田エライザや矢本悠馬といった若手の安定株がそろい、彼らの指導医として松雪泰子や椎名桔平といったベテラン勢が脇を固める。医療ドラマであり、ヒューマンミステリーでもある点も含め、これは期待が持てそうな作品だ。
物語の舞台は純正医科大学附属病院。諏訪野良太(玉森裕太)ら研修医たちは2年間の初期研修の真っ只中であり、1カ月ごとに様々な科を回って、将来進む道を決めることになる。第1話で良太の研修先は精神科。さっそく指導医の立石(松雪泰子)から任された患者は、毎月のように睡眠薬の過剰摂取で緊急搬送され、入院を繰り返している山野瑠香(仁村紗和)という、良太と同い年の女性。“患者から話を聞く”という精神科医の仕事をしようとする良太だったが、話しかけても沈黙を貫く瑠香。そんななか彼女のカルテを見た良太は、彼女の左腕にある火傷の痕が、元夫の名前であることに気が付くのである。
1エピソードで1カ月の時間が経過し、毎話異なる科で異なる状況にある患者たちと向き合っていく。精神科と外科、皮膚科と小児科、産婦人科、腎臓内科が序盤の段階で示されており、ドラマ前半は今回のようなエピソードが重ねられていくことになるのだろう。持ち前の人当たりの良さで周囲に影響を与えていくような主人公像も然り、今年の4月期に水曜22時枠で放送されていた『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(日本テレビ系)と似たものを感じてしまう。
もっとも第1話の段階では、境界性パーソナリティ障害と診断された患者の隠していた秘密の部分や、良太がそれに気が付くまでの過程は少々あっさりとした感じで描写されていったわけだが、こうしたものはキャラクター紹介などの前提を済ませた後にいくらでも深める余地があるといえよう。個人的にはそれ以上に、主人公たちが下宿するボロアパート“百薬荘”の談話室のシーンが魅力的に見え、彼ら研修医たちの青春群像にフォーカスが当てられることに期待を持っている。ひと通りの科を回り終えた後の物語の振り方には注目しておきたい。
劇中で描かれた“コードブルー”(ドクターヘリのあれではなく、病院内で緊急事態が発生された時にかかる呼び出しのことだ)のシーンは実に興味深い。病院内の医師たちが大挙に群れをなして駆け抜けていく一連は少々ドラマ的な見せ方ではあるが、息が上がった医師に手を差し伸べる良太の人柄の良さを表し、ドアに阻まれるさまで間の悪さを、エレベーターに乗り損ねることで研修医のなかでのヒエラルキーにも似た人間関係を示し、階段を登り続ける荒唐無稽さで病院の大きさを示す。そして、終盤に再び“コードブルー”が鳴り響いた時に微動だにせずに患者と向き合うことを選ぶ良太。ドタバタコメディ風の演出ひとつ取っても、導入としての確たる意味が付けられていた。
■放送情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
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