『サマータイムレンダ』いよいよ完結 圧巻の戦闘描写とストーリー構成がヒットの要因に
4月からTOKYO MXほかにて放送されているTVアニメ『サマータイムレンダ』がいよいよ最終回を迎える。ホラーサスペンス的な雰囲気をまとった作品でありながら、「影」という未知の敵との心理戦や影との戦闘シーンが豊富に描かれ、国内のみならず海外でも人気となっている。
今期は『リコリス・リコイル』や『メイドインアビス』といった話題作が豊富に揃っていたが、『サマータイムレンダ』が人気を博している理由として挙げられるのは、練りに練られた緻密なストーリーと丁寧で臨場感のある戦闘描写だろう。テレビでの本放送以外にはTVerとディズニープラスでしか配信されておらず、他作品と比べて話題の種が広がりにくいという事情を踏まえると、本作は大健闘と言っていい。
本稿では、これまでの影との対決を振り返るとともに、作品の魅力を改めて考察してみたい。
物語は主人公の網代慎平が幼なじみである小舟潮の訃報を聞きつけ、葬儀に参列するため2年ぶりに故郷の日都ヶ島に帰省するところから始まる。しかし、海難事故が死因とされていた潮の死にはいくつかの不可解な点があった。そこでキーになってくるのが島に昔から伝わるという「影」の存在だ。潮の死の真相を確かめるべく、影の秘密を探っていく慎平たちの姿が描かれていく。
本作を前半と後半の2つに分けるとするならば、前半にあたる1クールでは、ホラーサスペンスとしての要素が強かった。序盤からシデが夏祭りの会場で島の人間を飲み込んでいったように影という未知の存在への恐怖が描き出されていった。次第にハイネという存在、影の狙いや出自が明らかとなり、それを食い止めるべく何度もループを重ねていく慎平の決死の覚悟には心を動かされた。そしてすでに死んだとされていた潮が影として登場し、ヒロインとして慎平たちを支えていたのも忘れてはならない。彼女の存在によって影との対峙も容易となり、影そのものの真実にも近づけたからだ。
後半では一転して戦闘シーンが数多く描かれた。第15話でのシデとハイネ率いる影との総力戦を始め、第19話ではOPでも描かれていた海辺でのシデと南方ひづるの対峙など、影との戦闘シーンが非常に多く目が離せない展開が続いた。中でも第20話では、これまで誰も失うことなく物語を進めてきたが、慎平の時間のリミットがきてしまったことで、精神的支柱でもあったひづるを失ってしまう。さらに影としてこれまで敵対していた澪が仲間に加わるという展開や黒幕の一人と思われていた菱形青銅の目的が明らかとなるなど、急展開を迎えたのが後半だった。影という強大な敵を前にして慎平たちが一致団結して試行錯誤しながらも立ち向かっていく展開には胸を熱くさせられた。