『赤いナースコール』最後に生き残ったのは? 最終回の結末から考察ドラマの進化を考察

『赤いナースコール』最後に生き残ったのは?

 『赤いナースコール』という作品全体を通して、考察ドラマの進化と定着を感じた。榎木田の「なかなか狙い通りには当たらんもんだ」というセリフがドラマを観る側の考察を指すかはさておき、最終的な着地点を見越して各話のラストにショッキングなシーンを配置し、「これまでで一番難しい」という声も上がるほどミスリードで視聴者を翻弄した。女の子とおもちゃのサルなど未回収の伏線もあるが、脚本家である翔太朗を主人公にし、患者たちとの会話でそれまでの伏線を整理して誘導するなど、視点を共有する工夫も見られた。

 地上波の限界に挑戦し、可能性を広げたことも特筆される。轢死や焼死、チェーンソーなどの殺害方法、血のりをふんだんに使ったセットや切断死体の特殊造形など効果的な画づくりでスプラッター要素を追求した。これらは、残虐描写そのものより、コンプライアンスに配慮しながらどこまで表現できるか見極める点に狙いがあったと推察される。こうした凄惨なシーンを支えていたのが全編にわたって漂うそこはかとないユーモアで、意外性と安心感を生むバランスは池田鉄洋や森田甘路ら俳優陣の貢献が大きい。

 『赤いナースコール』というタイトルは、血を想起する視覚イメージと往年の名作ドラマの定番感を備えていた。ナースコール自体にさしたる意味はなかったが、謎めいた響きが関心を喚起し、持続させる象徴的なネーミングだった。

■配信情報
ドラマプレミア23『赤いナースコール』
Paravi、TVerにて配信中
出演:佐藤勝利(Sexy Zone)、福本莉子、池田鉄洋、ベッキー、木村了、山本浩司、橋本淳、森田甘路、大水洋介(ラバーガール)、堀口紗奈、板尾創路、浅田美代子、鹿賀丈史
企画・原作:秋元康
監督:本橋圭太、上田迅
脚本:秋元康、宮本武史、服部隆、吉崎崇二
音楽:矢野博康
主題歌: みゆな「凝視」(A.S.A.B)
オープニングテーマ:Sexy Zone「Sleepless」(Top J Records)
チーフプロデューサー:森田昇(テレビ東京)
プロデューサー:北川俊樹(テレビ東京)、平部隆明
制作:テレビ東京、ホリプロ
製作著作:「赤いナースコール」製作委員会
©「赤いナースコール」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/akanasu/
公式Twitter:@tx_akanasu
公式Instagram:@tx_akanasu

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