リヴァプールが舞台の新ドラマ  『レスポンダー 夜に墜ちた警官』が描く、人々の矜持

『レスポンダー』が描く、人々の矜持

 かつてはイギリスの主要な港湾都市として、その後はザ・ビートルズを生んだ街として、さらに最近では、昨シーズンまで南野拓実選手も所属していたプレミアリーグの古豪・リヴァプールFCのホームタウンとして、世界中の人々に広く知られているイングランド北西部マージーサイド州の中心都市、リヴァプール。この街を舞台とした、新しいドラマーーしかも、ひとりの警察官を主人公としたドラマが誕生した。『SHARLOCK/シャーロック』や映画『ホビット』シリーズ、さらには『ブラックパンサー』のCIAエージェント役としてMCUにも参加している名優マーティン・フリーマンが、製作総指揮にも加わり、これまでとは見違えるシリアスなルックで主演しているドラマ『レスポンダー 夜に堕ちた警官』(全6話)だ。

 「レスポンダー」とは、夜の街を車でパトロールしながら、オペレーターの指示に従い速やかに現場に急行し、その初期対応をする警察官を意味する。その「現場」は、酔っ払い同士の喧嘩から強盗、殺人、ドラッグ関連まで、実にさまざまだ。しかも、それがいつどこで起こるかわからないという、非常にストレス過多な業務だ。命が危険にさらされる現場だってあるだろう。そんな「レスポンダー」の業務を毎夜担当している主人公・クリス(マーティン・フリーマン)は、もはやメンタル的にもギリギリの状態にあるようだ(ドラマの冒頭は、彼がセラピーを受けているシーンから始まる)。

 こわばった表情で、今夜も街をパトロールするクリス。暴言交じりの少々手荒いやり方ではありつつも、向かった先の近隣トラブルを慣れた様子でさばいてゆく彼は、必ずしも「マッチョな警察官」というわけではない。「警察官」という職業柄、他人に強く当たることはあるけれど、それは相手になめられないためだ。なにせ、彼が相手にするのは、酔っ払いや薬物中毒者が、その大半を占めるのだから。しかし、他人に自らの弱みを見せることができないどころか、その職業柄、日々の業務の内容を妻にも話せないストレスが、彼の精神を深く蝕んでいる。神経衰弱ギリギリの孤独な警察官。それが本作の主人公だ。

 そんなある夜、パトロール中の彼のもとに、一本の電話が掛かってくる。警察のオペレーターではない。学生時代からの腐れ縁の友人であり、現在はドラッグの売買にも手を染めている男・カール(イアン・ハート)だ。「ケイシーという女を捜して連れてこい」。ケイシー(エミリー・フェアン)とは、クリスも馴染みのある薬物中毒の若い女性だ。カールとは持ちつ持たれつの関係であるクリスは、不平を言いながらも程なくケイシーを見つけ出す。しかし、ちょっとした親心で、彼はケイシーを逃がしてしまうのだった。「やっかいなやつが探しているから、しばらく街を離れたほうがいい」と。だが、その後、驚愕の事実が発覚する。ケイシーは、出来心でカールのドラッグを強奪し、それを自らの手でさばこうとしているのだ。自分よりも先にカールがケイシーを見つけたら、彼女は間違いなく殺されるだろう。クリスは再び夜の街で、ケイシーを捜すことになる。

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