『競争の番人』『ミステリと言う勿れ』など “最終回らしくない最終回”を作る月9の挑戦

“最終回らしくない最終回”月9の挑戦

「それでも俺たちは戦い続けますよ」

 『競争の番人』(フジテレビ系)第10話で藤堂清正(小日向文世)が「これで終わりじゃない。私がいなくなっても談合はまたどこかで続く。談合はなくならないよ」と語った際に、小勝負勉(坂口健太郎)が返した言葉である。

 不正を正す側だった藤堂がダークサイドに堕ちたのは、阪神・淡路大震災がきっかけだった。行き過ぎた競争の結果、安く請け負った業者がマンションの耐震強度を偽装。震災によってマンションは倒壊し、藤堂の妻は帰らぬ人となった。この出来事を機に、藤堂は競争を憎むようになり、悪事に手を染めていく。ベクトルは違えど、小勝負と藤堂の間には常に復讐の炎が燃えていたというわけだーー。

 小勝負と別れたあと、東京地検は藤堂を逮捕。第1話からラスボスとして君臨していた藤堂に対し、“弱くても戦える”と信じて疑わなかった小勝負の完全勝利で幕を閉じた。だが、この物語には続きがある。今回のことで地元・愛媛県に異動となった小勝負。最終話では、そんな彼がスーパーで立てこもり事件に巻き込まれてしまう。本件も“競争”が絡んでいて……。

 視聴者の中には、藤堂との決着で最終回だと思っていた人も多く、SNSでは次回が最終回だという事実に驚く声が散見された。この感じ、一度経験したことがある。前クールで同じ月9枠で放送されていた『元彼の遺言状』(フジテレビ系)だ。

 第1話で主人公の弁護士・剣持麗子(綾瀬はるか)の前に突然現れた謎の男・篠田敬太郎(大泉洋)は、殺人犯として警察に追われている身だった……。第10話にて、麗子が彼の冤罪を晴らして一件落着。ここで完結するかと思いきや、翌週に11話を放送。最終回として、麗子が失踪し、篠田が活躍するスピンオフ的なエピソードが放送された。

 もう少し月9を遡ってみよう。『元彼の遺言状』の前に放送されていたのは、菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)である(以下、ネタバレ含む)。

 主人公の大学生・久能整(菅田将暉)は、病院にて不思議な魅力を持つライカ(門脇麦)と出会う。ライカは、整に自分が千夜子という女の子の別人格であることを明かす。10話では、千夜子が里親に引き取られることが決まり、ライカが“消えること”を選択するシーンが描かれた。整とライカの別れには多くの視聴者が涙。こちらも「ファイナルエピソード」と銘打っていたものの、最終回ではない。

 11話と最終話では、主に犬堂我路(永山瑛太)が、妹・愛珠(白石麻衣)の死の真相に迫る「エピソード2.5」が放送された。第3話(エピソード2)で整と我路が再会するまでの過程を描き、物語に散りばめられた伏線を回収。ドラマの定石を覆すラストを迎えた。

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