ホラー映画がコロナ禍でも好成績 『IT/イット』ビル・スカルスガルドの新作が北米No.1に
夏の大作ラッシュが区切りを迎え、9月の北米興行は穏やかだ。スタジオ各社は次の大作ラッシュを晩秋~冬に控え、現在は映画賞シーズンに集中しているところ。もっとも2022年は例年以上の“穏やかさ”で、9月9~11日の北米週末興行は、市場累計収入が約3900万ドルと昨年(2021年)から35.3%の下落。『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が公開された2019年と比較すれば約3割の数字にとどまった。
週末興行ランキングのNo.1を飾ったのは、その『IT/イット』シリーズでペニーワイズを演じたビル・スカルスガルドが“恐怖の宿泊客”を演じる『Barbarian(原題)』。事前には3日間で500~600万ドルと予測されていたが、実際には1000万ドルに乗る好スタートとなった。
物語の主人公・テス(ジョージナ・キャンベル)は、採用面接のためにデトロイトを訪れる。ところが、一夜を過ごすために民泊を予約していたところ、なぜかダブルブッキングが起きており、宿泊先には先客(ビル・スカルスガルド)がいた。深夜に到着したテスはやむを得ずそこに泊まることを決めるが、そこには奇妙な先客以上の恐怖が待ち受けていた……。
監督・脚本を務めたザック・クレッガーは、数々のテレビ・映画に携わってきた俳優・コメディアン(監督・脚本・主演を務めた『お願い!プレイメイト』(2009年)は日本でも観ることができる)。ホラー映画は新境地だが、Rotten Tomatoesでは92%フレッシュという高評価を獲得。観客評は賛否両論ながら、口コミ効果が良い方向に転がれば、9月のランキングではさらなる粘りも期待されるところ。日本でのリリース情報が待たれる。
コロナ禍においては、数々のホラー映画がスタジオの期待に応えてきた。米Deadlineは、今週第6位の『The Invitation(原題)』やA24製作『Bodies Bodies Bodies(原題)』、2022年版『スクリーム』といったホラー映画が、初動成績の3倍以上という優れた興収成績を軒並み記録していることを指摘。『ブラック・フォン』(2022年)に至っては3.8倍というスマッシュヒットとなっている。大手スタジオはホラー映画をしばしば配信に回すが、ディズニー/20世紀スタジオは、こうした興行的傾向や試写での好評を受けて『Barbarian』の劇場公開に踏み切ったとみられる。
また第2位の『Bramastra Part 1: Shiva(英題)』は、旧20世紀フォックスが擁していたインドの製作会社Fox Star Studios(現在はディズニー傘下のStar Studios)が2017年頃から進めていた一大企画。「インド初のシネマティック・ユニバース作品」と形容されており、本作が3部作の皮切りとなる。撮影は2018年から断続的に実施されていたが、コロナ禍の影響もあり、2022年9月に満を持しての世界公開となった。
北米でもわずか810館で440万ドルと健闘している本作は、本国・インドやイギリスで同時公開されており、インドでは3日間で1890万ドルというロケットスタート。インドの歴代トップ10に入る初動記録を打ち立てた。現時点で世界累計興収は2390万ドル、次なるインド発の話題作と見てほぼ間違いないだろう。
物語の舞台は現代のインド。主人公の青年・シヴァは、イーシャという女性との激しい恋に落ちる。ところが、シヴァは“ブラーマンシュ”と呼ばれる裏社会との間に繋がりがあったことを知り、2人の運命は大きく変わっていく……。監督・脚本は『若さは向こう見ず』(2013年)のアーヤン・ムケルジー。
今週の第3位以降をご紹介する前に、先週ご紹介したランキングに、その後大きな変化があったことを振り返っておきたい。前回も記したように、9月3日に鑑賞料金一律3ドルの「全米映画デー」が開催され、またレイバー・デーの連休もあったため、速報値から確定値の間にやはり開きが生じていたのだ。