『鎌倉殿の13人』前半戦とは別人の鬼のような小栗旬の眼光 “頼朝化”した義時の未来は?

『鎌倉殿の13人』“頼朝化”した義時

「よかったかどうかは分かりません」
「しかし、これしか道はありませんでした」

 義時が政子と2人きりで言葉を交わす場面では、これまでに度々、義時が姉の前でふいに“弟”の顔になることがあった。けれど、この場面で見せた義時の顔つきは、北条の未来を築くために覚悟を決めた者の顔であり、弟としてのものではなかったし、その覚悟ゆえ、これしか道がなかったのではなく、あえてこの道を選んだようにも見える。

 頼朝の教えを忠実に守り、冷血な決断を下した義時の耳に、兄・宗時(片岡愛之助)の声が蘇った。

「坂東武者の世をつくる。そして、そのてっぺんに北条が立つ」

 兄の野心を引き継ぎ、頼朝に付き従ってきた義時の、覚悟を決めたその眼光は鬼のように恐ろしかった。頼家が意識を取り戻した今、鬼のような眼を見せた義時はどのような決断をくだすのか。

 第31回では、能員を演じる佐藤の演技も魅力的だった。佐藤が浮かべる奇怪な笑みやこ憎たらしい言動はコミカルにも映るが、打算的な能員の底知れなさをも感じさせるものだった。

 討ち取られる直前、能員は「北条は策を選ばぬだけのこと。そのおぞましい悪名は永劫消えまいぞ」という呪詛のような言葉を吐いたが、このときの佐藤の目つきが心に残る。北条家を睨みつけるその目には、これまでの飄々としたさまは一切感じられず、北条への怒りや憎しみだけが純粋に感じられた。腹の底を見せてこなかった能員の本心がここでようやく露わになったように思えた。“おぞましい悪名”と呼ばれた北条には、どのような未来が待ち受けているのだろうか。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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