『鎌倉殿の13人』金子大地が見せる頼家の感情のゆらぎ “泰時”の誕生など盛りだくさんの回に

『鎌倉殿の13人』頼家の感情のゆらぎ

 ある晩、蹴鞠している頼家に義時が歩み寄る。

「頼朝様は人を信じることをなさらなかった。お父上を超えたいなら、人を信じるところから始めてはいかがでしょう」

 義時の言葉を聞き、決心した頼家は「わしは一幡を跡継ぎにする」と義時に伝えた。比企の顔色を窺っているのではなく、せつの持つ強さが決め手となった。

「せつとなら鎌倉をまとめていけるような気がする。私は弱い。信じてくれる者を頼りたい」

 これまで父のようになろうと背伸びしていた頼家が素直な気持ちを晒した。「私は弱い」と口にできたことは、頼家の強さになるだろう。この言葉を聞き、義時が「よいと思います」と返すと、頼家はとても驚いていた。きっとこのとき、本心から「頼家のため」を思う御家人がずっと近くにいてくれたことに気づかされたのではないだろうか。

 第29回は善児(梶原善)と北条家の因縁や善児に育てられた孤児トウ(山本千尋)の登場、初(福地桃子)を想う頼時への義時のずれたアドバイスや時政らに頼まれ、呪詛を行うことになってしまった阿野全成(新納慎也)と実衣(宮澤エマ)のすれ違いなど、落ち着いた演出ながらも内容が盛り沢山な回であり、シリアスな雰囲気とコメディ要素の緩急が面白い回でもあった。

 そんな中、金子が見せた感情の機微が、頼家が成長していく様を見せてくれた。今後、頼家には過酷な運命が待ち受けるが、頼家が人を信じられるようになることを願ってやまない。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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