『ソー:ラブ&サンダー』北米で2週連続No.1 ただし推移はMCU史上ワースト級

『ソー:ラブ&サンダー』北米で低調な推移

 この成績を好調と見るか、不調と見るか。7月15日~17日の北米週末興行ランキングは、予想通り先週に続いて『ソー:ラブ&サンダー』が第1位に輝いた。しかし今週は3本の新作映画が公開されたが、いずれもマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)と争うような作品ではないため、2週連続のNo.1は当然の結果と言えるもの。むしろ本作の規模を鑑みれば、必ずしも手放しに称えられる状況ではないだろう。

 毎週月曜日にお届けしている本稿では、先週MCU作品のクオリティ・コントロールに問題が生じていることをご紹介したばかり(参考:『ソー:ラブ&サンダー』北米No.1発進 マーベルは“フェーズ4”への批判を払拭できるか)。『ソー:ラブ&サンダー』はRotten Tomatoesにて批評家スコア68%・観客スコア79%、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」評価と、MCU作品としては低めの評価。スーパーヒーロー映画は2週目以降に下落率が大きくなりがちなため、この評価が興行面に影響をもたらす可能性がある……と記したが、残念ながらこの懸念が現実のものとなってしまった。

ソー:ラブ&サンダー

 『ソー:ラブ&サンダー』の週末3日間の北米興行収入は4600万ドルで、下落率は前週比-68.1%という急落ぶり。先週末の初登場では3日間で1億4300万ドルを稼ぎ出したため、約1億ドルの減少となった。2週目の推移としては、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)の-67%に続いてMCU史上ワースト級。『ブラック・ウィドウ』(2021年)も-67.8%、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)も-68%という下落率だが、前者は公開同日に配信開始、後者は興収規模が非常に大きかった&下落率が大きくなるクリスマスと重なったため、同じように比較することはできない。

 MCUのフェーズ4作品では、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)が2週目で-54%という優れた推移を見せた。しかし2022年に入ってからは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『ソー:ラブ&サンダー』という続編映画が2作連続で厳しい状況となっており、どちらも既存のファン層以外に訴求する力に欠けたことを示唆している。11月に北米公開の『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー(原題)』も続編映画だが、同作はブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンが逝去したことにより、主役交代というリニューアルを余儀なくされた一本。前作の大ヒットや、否応なく高まった世間の注目がどのように反映されることとなるか。

ソー:ラブ&サンダー

 ただし、『ソー:ラブ&サンダー』は1週目のスタートダッシュがすさまじかったため、わずか10日間で北米興収2億3327万ドル、海外興収4億7970万ドルを記録し、世界累計興収は早くも7億ドルを突破した。この駆け上がり方はさすがMCU作品と言うべきである。

 王者の話はこのあたりにしておいて、週末に初登場した3本の新作映画の話題へ移ることにしよう。第3位の『Where the Crawdads Sing(原題)』は今週最大の話題作で、全世界で1200万部以上を売り上げ、日本でも大ヒットしたベストセラー小説『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)の映画版。事前の予想を超え、3日間で1700万ドルという滑り出しとなった。

 本作は幼い頃からノースカロライナ州で孤独に生きる女性・カイアの人生と、彼女の暮らす湿地で男性の遺体が発見された事件が絡み合うヒューマン・ミステリー。カイア役は『ノーマル・ピープル』(2020年)やアンドリュー・ガーフィールド主演『アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実』(2022年)、セバスチャン・スタン共演『フレッシュ』(2022年)と話題作の続くデイジー・エドガー=ジョーンズが演じ、監督は新鋭オリヴィア・ニューマンが担当。俳優のリース・ウィザースプーンがプロデューサーを務めた。製作費には2400万ドルが投じられている。

 大きな特徴は批評家と観客の反応が真っ二つに分かれたことで、Rotten Tomatoesでは批評家スコア36%という低評価ながら、観客スコアは96%というトップクラスの支持を獲得。CinemaScoreでは「A-」の高評価を記録し、別の出口調査では観客の70%が「人に薦めたい」と回答した。観客の男女比は74%が女性で、年齢層では18~34歳が全体の40%、45歳以上が41%。今後、口コミによって大人の観客がさらに増えていくことも期待できる。日本公開は未定だが、原作は日本にもファンの多い作品だけに情報の発表を楽しみにしたい(劇場公開があることを信じながら)。

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