『ちむどんどん』なぜ方言に違和感を感じるのか? 沖縄を描く工夫と地元の人が思うこと
沖縄のニュースメディアでは、ことばへの違和感が挙げられていた。
「山原出身の私は、ひそかに山原の言葉がついに全国デビューを果たすと期待を寄せていた。しかし放送では、山原とは明らかに違う『本島中・南部』のアクセント、イントネーション、それも若者言葉だった」とある。(※1)
なぜ沖縄の人が、本作の言葉遣いに違和感を抱いてしまうのか。
沖縄の言葉は、地域や島によって大きく異なる。例えば、沖縄の空港に降り立つと「いらっしゃいませ」を意味する「めんそーれ」を多く見かけると思う。これが石垣島だと「おーりとーり」、宮古島は「んみゃーち」になる。本作で暢子の好物として登場する、「サーターアンダギー」は、「砂糖=サーター」「アンダ=油」「アギー=揚げたもの」つまり、「砂糖天ぷら」を意味する。宮古島では「さたぱんびん」、筆者が暮らす竹富島の言葉では「さたくんこ」と言う。
⋱ #ちむどんめし「暢子が作る #サーターアンダギー 」 ⋰
沖縄の代表的なお菓子です🍩
揚げたてのサーターアンダギーは格別においしいですよね✨#ちむどんどん #朝ドラ pic.twitter.com/DttBJZqeHD
— 連続テレビ小説「ちむどんどん」 (@asadora_nhk) June 28, 2022
地域によって言葉やイントネーションが異なるため、方言指導では全国の視聴者に伝わりやすい言葉を選ぶようにしているようだ。本作では、暢子の下宿先である「あまゆ」の主人・金城順次役も演じている藤木勇人が方言指導をしている。藤木は『ちゅらさん』にも出演し、劇中の言葉を監修していた。
藤木は、ちむどんどん公式サイトのインタビューで「全国の人が聞いて『沖縄らしいな』と感じつつ、きちんと意味が伝わることば選びを大切にしています。当時やんばる地域で使われていた方言を忠実に話すと、おそらく私でも意味がわからない言葉が多いと思います。なので沖縄北部のみなさまにはご理解いただき、私流の「ウチナーヤマトグチ」という言葉を駆使させていただいてます」と、ことば選びについて語っている。(※2)
また、「沖縄を舞台にするからには地元の人も納得できる言葉遣いにしたいが、うちなーぐちをそのまま使うと、他の地域の人には理解が難しい。忙しい朝に身支度をしながらでも“聞ける”ことが、朝ドラでは重要だった」と、4月22日付けの「朝日新聞」で語られている。(※3)このため、沖縄の人から見たときに方言に違和感があるようだ。
7月18日からの第15週「ウークイの夜」では、お盆の里帰りが描かれる。沖縄のお盆は3日間あり、その最終日である「ウークイ」は、ご先祖様たちがあの世へ帰るのを見送る最も大切な日だ。この日に四兄妹が久しぶりに沖縄の地・やんばるに集まる。そして、明かされていなかった、母・優子(仲間由紀恵)と、父・賢三(大森南朋)の忘れられない過去が語られる。
これまでの『ちむどんどん』では、戦後のアメリカ統治下を描きつつも、どことなくぼやかされ、コメディ色が強かったように見えた。しかし、沖縄でヒーロー的存在の具志堅用高や、歌子(上白石萌歌)を民謡の道へ導いた八重山民謡の名手・大工哲弘の起用や、沖縄の自然光や音の演出、三浦大知の主題歌「燦燦」やオープニングのアニメーションなど、沖縄の良さを真摯に描いている面も多くある。第15週からは、和彦の取材相手の役として沖縄県出身の俳優・津嘉山正種が出演する。
現時点では、恋愛や仕事で人と真正面から向き合おうとしないように見える暢子の幼さが残念に映る。やんばるへの帰省を通して、暢子の変化は見られるのだろうか。主人公の魅力と、沖縄の魅力がより多くの視聴者に伝わることを願ってやまない。
参照
※1. https://hubokinawa.jp/archives/16941/2
※2. https://www.nhk.or.jp/chimudondon/topics/interview/12.html
※3. https://digital.asahi.com/articles/ASQ4P51VDQ4MUCVL05R.html?iref=pc_ss_date_article
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK