中村倫也と有村架純の連携プレーが痛快　『石子と羽男』は今の時代の“一服の清涼剤”に

　「カフェでケータイ充電してたら訴えられたんです！」。誰の身にも起こりそうな身近で小さな事件を、優等生なパラリーガルと型破りな天才弁護士のタッグで解決していくドラマ……そう聞くだけでも十分面白そうなのに、金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます？ー』（TBS系）はそこからさらに二転三転していく。

　『アンナチュラル』『MIU404』『着飾る恋には理由があって』『最愛』（全てTBS系）と、次々に人気作品を生み出してきた新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督。このタッグが仕掛けるリーガル・エンターテインメントが一筋縄でいくはずがなかった。

　有村架純扮するパラリーガルの石田硝子（通称：石子）は、東大卒＆コツコツと真面目に積み上げていく努力家。だが、実はこれまで4回も司法試験に落ちてしまったという意外な過去を持つ。今は父親の綿郎（さだまさし）と街の弁護士事務所「潮法律事務所」を運営しており、父娘仲は良好に見えるものの、なぜか丁寧すぎる敬語で会話をしているのも気になるポイントだ。

　一方、中村倫也演じる羽根岡佳男（通称：羽男）は一発で司法試験に合格した高卒の弁護士。カリスマ的な天才弁護士に憧れてクセありなセリフや服装でセルフブランディングするものの、実は計画通りに物事が進まないとフリーズしてしまう人間味あふれる部分も。かと思いきや、写真のように見たモノを記憶できる“フォトグラフィックメモリー“の持ち主という、本物の天才でもあるから複雑だ。人はそんなに単純ではない。表面だけではわからない。主要キャラ2人だけを見ても奥深い人間模様を予感させるドラマだ。

　だからこそ、電源ドロボー事件だけで終わらないのだ。ひょんなことから潮法律事務所へとやってきた羽男とコンビを組むことになった石子。最初の依頼人は、連日カフェに長居し無断でケータイを充電したとして、店長から100万円の損害賠償を請求された大庭蒼生（赤楚衛二）だった。

　簡単に示談に持ち込めると思っていた羽男だったが、思いのほか熱くなっている店長の勢いに圧倒されてしまう。フリーズしてしまった羽男を見かねた石子が、カフェの経営状況から示談交渉の突破口を見出す鮮やかな連携プレーが実に痛快だった。