新井順子P×塚原あゆ子Dに聞く、『石子と羽男』制作秘話 キャストとのタッグは一期一会

新井順子×塚原あゆ子に聞く『石子と羽男』

 TBSドラマ『アンナチュラル』『MIU404』『着飾る恋には理由があって』『最愛』でタッグを組み、ドラマファンを唸らせてきた新井順子プロデュース、塚原あゆ子演出の新作が、今年の夏を盛り上げる。

 7月期のTBS金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』は、4回司法試験に落ちた崖っぷち東大卒パラリーガル・石子(有村架純)と、1回で司法試験予備試験と司法試験に合格した高卒の弁護士・羽男(中村倫也)の“石羽コンビ”が、誰にでも起こりうる珍トラブルに挑む異色のリーガル・エンターテインメント。アニメ『TIGER & BUNNY』やNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』、映画『響-HIBIKI-』などで脚本を執筆した西田征史が脚本を手がける。

 今回、新井Pと塚原監督に本作の企画の経緯からキャスティング背景、ドラマ作りに生きる“日々考えていること”などを聞いた。

「かっこいいだけじゃない中村倫也さんを見たい」

――今回のドラマが生まれた経緯を教えてください。

新井順子(以下、新井):企画はかなり前から練っていて、企画を考えはじめた頃は重いテーマの作品をやっていたので、キャラクターが面白い弁護士ものをやりたいなと思ったのが始まりです。面白い裁判ネタを集めた本を読んだときに、身近に起こりそうな小さな事件が大きく展開し動いていったら面白いんじゃないか、これまでと違う味わいの弁護士ものになるのかなと思いました。

――塚原監督は、コミカルなリーガルものをやると聞いたときのお気持ちは?

塚原あゆ子(以下、塚原):私は弁護士ものを結構やっていて、直近では日曜劇場で『グッドワイフ』(2019年/TBS系)をやりましたが、法廷セリフって難しいんですよね。でも法廷ものをやるなら、弁護士の言葉に対して逃げずにやる覚悟を持たなきゃいけないとは思いました。弁護士のリアルを描こうとすると、視聴者が「何を言ってるの?」と引っかかってしまうところがあるので、そのあたりが難しいなと思っています。

――有村さんと中村さんの起用理由を聞かせてください。

新井:有村さんとは『中学聖日記』(2018年/TBS系)を一緒にやって、次一緒にやるならコミカルな架純ちゃんが見たいと思ったんです。中村さんは、ここ最近かっこいい役が多かったけど、私はパンツが見えると記憶が飛んじゃう『メグたんって魔法つかえるの?』(2012年/日本テレビ)の中村さんが好きで。かっこいいだけじゃない中村さんを見たいなと。そんな2人が喧々諤々やり合っていくのは面白いだろうなと思いました。

――おふたりのお芝居をご覧になって、どのように演出されていますか?

塚原:有村さんは、今までの役とは違うコミカルなセリフ回しに、自分で「乗っかるぞ」と思って乗っかってきてくれることで、すごく表情豊かなキャラクターになっています。中村さんはコミカルだけではなくて、羽男のバックボーンだったり、彼がいろいろと抱えているものの中にある表情で、中村さんだからできる“幅の広さ”がお届けできるといいかなと思っています。

新井:中村さんって完璧なんですよね。鍛えられているから、何でもできちゃうんですよ。その上で、“生っぽさ”を出してほしいというか。

塚原:うまく言えないけど、そのときに感じたことだけを表現するとどうなるのかな、みたいなアプローチを狙いたくて。そこまで顔で表現しなくてもわかるかな、と信じるようなお芝居をしてもらうことで、“引き算した先”と“足し算した先”の振り幅が大きくなればいいなと。それは有村さんにも同じことを伝えていて、コミカルだけど、グッとくる表情もちゃんと押さえていくようなやり方にしたいですね。

――有村さんと中村さんの役への向き合い方は?

塚原:2人とも真摯に向き合っていますし、今回はいつにも増して「できるだけ何も言わずに、現場でやってみながら考えてもらいたいな」と思っていて。コメディは瞬発力が勝負だけど、決めちゃうとそれしかできなくなってしまうんですね。でも、W主演でバディものとなると、そうじゃないところに何か発見があるようなところを目指さなきゃいけない。ただ、おふたりとも本当によく台本を読み込んでいらっしゃるので、「このシーンの狙いはこうです」ということだけ共有できればいいのかなって。できるだけ自由に遊んでもらえる土俵にしていきたいと思っています。

新井:おふたりとも真面目ですよね。芸歴が長いのにすごいなと思います。めちゃくちゃセリフが多いし長いけど、「なんだっけ」とは言わないんです。

塚原:それに、コミカルな作品だとわかっているから、現場に真面目な顔では入らないんですよ。プロだなと思います。あとは台本を持って入らない。本当にすごいですよね。

新井:今日は中村さんが撮影していますけど、(セリフの量が)「多い!」って。でも、私はそういう中村倫也が見たいって気づいたんです(笑)。「数字はやめて」と言われたのですが、すでに数字がたくさん入ってる台詞を作っていて。

塚原:ひどいね(笑)。

新井:あははは(笑)。でもバッチリ覚えてきて、それをワーッて言いますから。どこで息を吸ってるんだっていうシーンも1話にあるんですけど、見ていてワクワクします。

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