中村倫也と有村架純の連携プレーが痛快 『石子と羽男』は今の時代の“一服の清涼剤”に
しかし、物語はそこで終わらない。なぜ大庭がカフェに連日長居していたのかという大前提に視点が移り、そこから新たな事件の香りが漂い始める。大庭が毎日そのカフェを利用していたのは、かつての職場である自動車販売店を盗撮するためだった。そして上司だった支店長からパワハラを受け、支店長の指示で同僚たちからもいじめを受けた結果、左遷されたという過去が語られる。
また、唯一大庭に手を差し伸べてくれた同期・沢村(小関裕太)が、今もその職場に残っており、きっといじめのターゲットになっていると予想されること。沢村を救うために、パワハラの証拠を集めようとカメラを回し続けていたというのだ。
ところが、今度は職場の人間たちから「パワハラをしていたのはむしろ大庭だった」というタレコミも舞い込んでくるから、石子も羽男も、そして我々視聴者も大いに混乱させられる。果たして誰が嘘をついているのか。何が真実なのか。一気にサスペンスの雰囲気が立ち込める。
見る人によって事実が異なるのは、現実社会でもよくあること。そうした人間関係のもつれを整理するためにあるのが法律であり、内々のことだからこそ本人同士よりも円滑に解決するのが弁護士のミッションであると石子は言う。いじめ、パワハラ……それらは法律でトラブルを最小限にすることができる。情けないと思わず、まずは「声を上げよう」と。
そんな石子の真面目なメッセージに対して、カーチェイスも辞さない型破りな羽男の作戦というコントラスト。さらに、支店長を追い詰めて終わり……ではなく、支店長もまたパワハラをせずにはいられなかった環境に「声を上げる」ことができる1人であると、羽男がまくしたてる。そんなグッとくるセリフとクスッとさせられるやり取りというバランスの良さも、このドラマらしさだ。
きっと“そんなコトで訴える?“という事件の背景には、“そんなコト“では済まなかった事実がある。そこまで深堀りして目を向けることで、人はやっとお互いを理解し合えるのかもしれない。羽男が石子に言いかけた「実は俺……いや、いい」という言葉にもきっとまだ語られていない物語が広がっているのだろう。
次回以降、潮法律事務所に舞い込んでくる新たな事件と、そこから関連して語られる様々な事実、そして石子や羽男らの背景が紐解かれていくのが実に楽しみだ。どこか人と深く関わることにハードルの高さを感じ、表面的な情報だけで物事が語られがちな今こそ、この新たなリーガル・エンターテインメントが一服の清涼剤になってくれるのではないだろうか。
■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、小関裕太、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
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