『初恋の悪魔』『拾われた男』の2作で主演 “受容力”の役者・仲野太賀の快進撃が始まる
“狂気”の演技で視聴者を震え上がらせる一方で、コメディでも抜群のセンスを発揮している。『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(2016年/テレビ東京系)、映画『50回目のファーストキス』(2018年)、『今日から俺は!!(2018年/日本テレビ系)、『今日から俺は!!劇場版』(2020年)など、福田雄一作品への出演を重ね、彼が醸し出す「空気感」だけで笑わせるという高度なテクニックを披露した。時に「静かに」主役を食っている瞬間が何度もあった。
共演者からの信頼も厚い。『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018年)で仲野演じる主人公・タイジを虐待する母親に扮した吉田羊は、舞台挨拶で「息子役が太賀さんだから出演を決意した」と語っている。この作品で仲野は、母のDVにより抱えたトラウマを克服して「生き直し」をはかり、やがて母との関係を再構築する青年の複雑な内面を鮮やかに表現してみせた。ここでも持ち前の「受容力」が遺憾なく発揮されていた。
2020年には『生きちゃった』『泣く子はいねぇが』と主演映画が立て続けに2本公開。地上波初の主演ドラマ『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)も放送された。本作品は仲野が主演でありながら、毎回違うゲスト女優を迎えるという構成になっているため、ホストとしての役割も大きい。前に出過ぎず、女優を立てつつも、(主人公の妄想の物語なので)毎回違う役を、それぞれに味わい深く仕上げる。回ごとに面子の違う“セッション”で、“名ベーシスト”ぶりを発揮していた。
心の深い内に秘めた悲しみ、苦渋、怒り、やるせなさーー。そういったものを、面差しだけで静かに表現できる俳優である。宮藤官九郎脚本の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年/NHK総合)で演じた小松勝が、学徒出陣壮行会で行進しながら愛する妻・りく(杉咲花)と乳飲み子の娘に向けた表情が今でも忘れられない。『コントが始まる』(2021年/日本テレビ系)で、春斗(菅田将暉)がマクベス解散を告げたラーメン屋での潤平の芝居は、「2021年度・泣き演技ベストアクト」と言っても過言ではないだろう。
そしてこの夏、俳優・松尾諭の数奇な人生を著した私小説をドラマ化した『拾われた男』では、松尾の魂をキャッチし、さらに独自のテイストを加えた仲野の妙演が光る。仲野演じる松戸が全身で訴えかける役者の業(ごう)と、人間の悲しさ・可笑しみに心を鷲掴みにされてしまう。
常々芝居を通じて「対話」を続けてきた仲野が、坂元裕二節炸裂の会話劇『初恋の悪魔』に主演で挑む。林遣都、柄本佑、松岡茉優という個性豊かな共演陣とどんな“セッション”を見せてくれるのか楽しみだ。2022年、満を持してやってきた仲野太賀の“快進撃元年”を見届けよう。
■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、7月16日(土)スタート 毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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