小池栄子は“悪女”となるのか これまでと違う政子像で『鎌倉殿の13人』を牽引
ただ、家族思いで深い愛情を周囲に注ぎながらも、感情に流されず、冷静に判断できる聡明さも持ち合わせる政子。頼朝がふと本心を打ち明ける相手が義時であったように、御家人たちを束ねていくために政子も義時の能力を高く評価もしているし、頼りにもしているのが伝わる。
「まつりごとには口を出すなと鎌倉殿にきつく言われておりました」と政子は義時に言ったけれど、尼御台となって鎌倉を守る立場になってからは持ち前の政治力を遺憾なく発揮。彼女の強さ、政治力は頼朝から影響を受けたというより、頼朝の方が逆に政子のパワーを受けて邁進できていたのかもしれない。
神々しいまでに強さと愛に満ちた政子ではあるが、少し心配なのは妹の実衣(宮澤エマ)との間に生じた溝、確執が生まれたこと。頼朝の昏睡状態が続き、何とか目覚めてくれるきっかけがあれば……と必死で看病する姉・政子に向かって、「全成殿(新納慎也)が次の鎌倉殿になる覚悟をお決めになられました」と話し始めた実衣。「やめてちょうだい。まだ早いわ」と政子が話を中断させようとするのに、「そのときは私も御台所となって鎌倉殿をお支えしていく……」と続けたため、「あなたに御台所が務まるものですか」「あなたには無理です」と政子はきつめに言い捨てた。
その言葉を重く受け止め、姉上にも(御台所が)出来たんですから私だって、ちゃんと務められると思っていた実衣は「悲しい。そんな人ではなかったのに。力を持つと人は変わってしまうのね」と、政子に対する不満を募らせてしまった。
鎌倉の御家人を束ねる前に、北条家もすでに分裂を始めている。誰とでも分け隔てなく接することができ、コミュニケーション能力の高い政子は義時の力を借りて、この状況をどう乗り越えていくのか。母としての葛藤、頼朝の遺志を受け継いでいくために何を選択し、何を犠牲にしていくのか……。新しい政子像を見せてくれる小池栄子にさらなる期待が集まる。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK