小池栄子は“悪女”となるのか これまでと違う政子像で『鎌倉殿の13人』を牽引
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は源頼朝(大泉洋)が亡くなり、物語は7月17日放送の第27回から後半戦に突入する。それまで頼朝を中心として集っていた御家人たちの権力争いが始まろうとしている。
第26回「悲しむ前に」のラストで主人公、北条義時(小栗旬)が故郷の伊豆に帰る決意を姉の政子(小池栄子)に伝えた際に、政子は強い口調で引き止めた。「これまで頼朝さまを支えてきたように、これからは私を支えてください」と、義時の手を握り、その手に渡したのは頼朝がずっと身につけていた小さな観音像だった。
この観音像は、頼朝の乳母・比企尼(草笛光子)が幼い頼朝に贈ったもので、信心深い頼朝は自分の髪の中にしまい、肌身離さず持ち続けいていたもの。当然、政子にとっては大切な頼朝の形見だが、義時をまっすぐに見つめる政子の目力の強さに頼朝の意志を引き継ぐ覚悟を感じ、義時も鎌倉から離れられない運命を感じた瞬間だった。
その小さな観音像は、石橋山の戦いで洞窟に逃げ込んだ際、状況を悲観し、斬首も覚悟した頼朝が、もとどりから取り出したこともある。「こんなことならご本尊を持ってくればよかった」と子どものように拗ねる頼朝に、北条宗時(片岡愛之助)が「私が参りましょう」と北条館の離れ屋に隠していた本尊の観音像を取りに行くことになったのだった。
このとき、義時は別れ際に兄・宗時から「これはお前だけに言う」と思いを打ち明けられる。「坂東武者の世を作る。そして、そのてっぺんに北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもな。だから、それまでは辛抱しようぜ」と笑顔で熱く語った。驚く義時に見送られた宗時は、そのまま帰らぬ人となった。そもそも、伊豆に流され、自分の土地はもちろん、兵力も持たない頼朝を担いで平家を滅亡させるきっかけを作ったのは、義時の兄の宗時だった。
宗時によって“天下人”の歩みを進めた頼朝だったが、何よりも大きかったのは妻・政子の存在だろう。日本三大悪女の一人として真っ先に名前の挙がる北条政子だが、ただ強いだけでなく、小池栄子が演じる政子は慈愛に満ちた女性であり、とりわけ家族に対する強い愛を持つ女性という面が際立っている。愛娘の大姫(南沙良)を病で失ったとき、そして頼朝の最期を見届けるときの必死で看病する政子の姿には心を揺さぶられるものがあった。