『鎌倉殿の13人』頼朝の死で“前半戦”が終了 小栗旬が見せる義時の信念から目が離せない
『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第26回「悲しむ前に」。源頼朝(大泉洋)は御所に運ばれ、安らかに眠っている。医師の見立ては厳しく、北条義時(小栗旬)や政子(小池栄子)らは大きな衝撃を受ける。義時は先を見据え、大江広元(栗原英雄)らと頼朝の嫡男・頼家(金子大地)を次の鎌倉殿とする新体制作りを始めるが、比企能員(佐藤二朗)の力が増すことを嫌うりく(宮沢りえ)が夫・時政(坂東彌十郎)をたきつける。
「鎌倉あっての北条」
物語終盤で義時はこう言った。第26回は、頼朝が生死の境にいる間に、頼朝が築き上げた鎌倉のために行動する義時の姿が印象的な回となった。
頼朝に助かる見込みがないと知り、義時は迅速に動く。まずは御家人の中でも信頼の置ける梶原景時(中村獅童)と畠山重忠(中川大志)に真実を告げた。頼朝が重篤なことを内密にしたいとはいえ、頼家の乳母夫である能員に伝えないわけにはいかず、彼にも事実を打ち明ける。義時は、頼家が跡を継ぐために必要な手筈を広元や中原親能(川島潤哉)、三善康信(小林隆)に聞き、三浦義村(山本耕史)とも言葉を交わす。鎌倉のために、そして頼朝のために動く義時には悲しむ暇もないが、一人になり、腰を下ろしたときの表情には喪失感があった。
鎌倉安泰のための根回しに励む義時は、父・時政が頼朝の異母兄である阿野全成(新納慎也)に鎌倉殿の跡を継がせようとしているのを知り、牽制する。御台所を北条から出したいと口にした時政に、義時は「それは父上のお考えですか」と聞く。その声色と表情には強い緊張感があった。義時は決して北条が栄えることを望んでいないわけではない。だが、義時が何よりも大事にしているのは、彼が長年仕えてきた頼朝が築き上げた鎌倉の安泰。鎌倉のために動く義時だからこそ、北条と比企の競い合いによって鎌倉が2つに割れることを避けたいのだ。このシーンで、時政、ひいてはりくとの思惑の違いが明らかになった。
頼朝が亡くなっても、義時の忠誠心は頼朝の下にある。次の鎌倉殿の座をめぐって時政と能員が対立するが、義時は「御台所のお裁きに委ねるしかない」と言って鎮めた。時政は「北条」である政子が跡継ぎを決めることに「おう、それがいい」と得意げだが、義時は北条を理由に口にしたわけではない。私欲が垣間見える時政や能員とは違い、義時には、鎌倉のため、頼朝のためという筋の通った信念がある。鎌倉殿の後家である政子に腹を括るよう説得する義時は「悲しむのは、先に取っておきましょう」とも言った。この言葉は、姉に自身の立場を固めさせるためでもあったと思うが、自分に言い聞かせているようにも見えた。「悲しむ前に」やるべきことを果たす、それが頼朝に身を捧げてきた自身の最後の仕事だと考えていたはずだ。