『オールドルーキー』が描く夢の終わりと始まり 綾野剛と横浜流星が刻んだ言葉以上の感情
物語のはじまりは劇的なゴールシーンだった。最終予選の後半アディショナルタイム。途中交代の背番号13番の右足がボールをとらえる。そのままゴールネットに吸い込まれて決勝点となり、サッカー日本代表はワールドカップ出場を決めた。夢がかなった瞬間。歓喜の中心にいるのは新町亮太郎(綾野剛)だ。
ある程度の年齢で転職した人やセカンドキャリアに挑戦中の人にとって、見過ごすことのできないドラマが始まった。『オールドルーキー』(TBS系)第1話。物事には始まりがあれば、終わりがある。「スポーツ選手はいつか辞めなきゃいけないんだ」。泣きじゃくる娘に謝り、過去の自分を悔いる。夢の幕引きは意外なほどあっけなかった。
サポーターの前で「アイ・ハブ・ア・ドリーム」と叫んだ新町は、なぜエージェントになったのか? 過去の栄光は未来を照らしてくれない。着慣れないスーツを駅のトイレで脱ぎ、蛍光ベストとヘルメットに着替える。そんな時、偶然再会したのがスポーツマネジメントを手がけるビクトリー社長の高柳(反町隆史)だった。新町の窮状を察した高柳は、ある目的を持って契約社員の職をオファーする。
表舞台で脚光を浴びた人であるほど、舞台裏の孤独は身に沁みるものだ。明かりのないその場所は、まるで奈落の底のように感じられる。もう二度と同じ舞台に立つことはできない。でも、もしそれが次の舞台までの幕間だとしたら? 出番が終わっても劇そのものは続いていく。その時に「夢」を託せる相手がいれば、それは新たな別の物語になる。
新町の初仕事の相手はサッカー選手、矢崎十志也(横浜流星)だった。ドイツリーグに所属する矢崎は日本滞在中のサポートを求めており、ビクトリーも協力を申し出る。しかし、矢崎の要求するレベルは高かった。トレーニングジムに天然芝のフィールド、練習相手は矢崎のスケジュール優先で3人以上とゴールキーパーも、そしてマッサージの上手いトレーナー。それらに加えて、5千万円という高額のCM契約と滞在中の撮影を含むものだった。