『ちむどんどん』歌子の恋心が切ない 「何にもできないまま死んでいくと思う」が重く響く

『ちむどんどん』歌子の恋心が切ない

 『ちむどんどん』(NHK総合)第48話では、優子(仲間由紀恵)と歌子(上白石萌歌)が上京してきた。初めての東京にたじろぐ2人を智(前田公輝)が案内する。歌子は東京での暮らしに慣れた智に「智ニーニー、一段と格好よくなったね」と一言。小さい頃から恋慕う智に見せた歌子の笑顔は愛らしい。東京の女性たちのおしゃれな装いに「みんな、おしゃれだね」と歌子がつぶやくと、智は「歌子も負けてないさ。その洋服、似合ってるよ」と声をかける。その瞬間、歌子の顔がパッと華やいだ。

 視聴者は歌子の智への思いを十分に感じているが、肝心の智は歌子の思いに気づいていないうえ、暢子(黒島結菜)に思いを寄せている。

 「あまゆ」で優子と歌子の歓迎会が行われたが、歌子の自己紹介の後、智は意気揚々と暢子の料理人としての近況を皆に知らせた。場を盛り上げるために囃し立てる智と「もう、うるさい!」「黙って、ぽってかす!」と智を追いかける暢子の姿は、歌子の心情を知ってさえいなければ、単なる仲睦まじい幼なじみのやりとりに映ったことだろう。小さい頃のようにはしゃぐ智と暢子を見ていた歌子は、気まずそうに一瞬目を伏せ、平常心を取り繕うとしているように見えた。その目は、今にも泣き出しそうなほど切なかった。

 優子が三郎(片岡鶴太郎)と「あまゆ」の店内へ戻ったとき、歌子はぽつねんと座っていた。歌子が味わっている孤独や暢子への羨望を表しているようだった。「みんなにかわいがられて、好きなことをして生き生きしている」暢子に対し、歌子は「うちだけ、同じところをぐるぐる回ってる」とつらい心の内を明かす。病気がちであること、そのことが災いして歌のオーディションで失格になったこと、仕事を辞めたこと、そして智への思いが届かないこと。あらゆる思いを一人で抱え込む歌子の口から発せられた「仕事も恋愛も結婚も、何にもできないまま死んでいくと思う」という言葉は心に重く響く。

 第48話では、歌子が小学生の頃に運動会で智からもらったメダルが再び登場した。運動会での出来事が、歌子にとってどれだけ大事なものなのかが痛いほど伝わる。なかなか実らない恋と姉への羨望の眼差しといえば、2021年度前期放送の『おかえりモネ』(NHK総合)で、姉・百音(清原果耶)に嫉妬してしまう妹・未知(蒔田彩珠)が思い出される。最終的に百音と未知は和解するが、そこまでには紆余曲折があった。暢子と歌子がお互いの状況を知るには、もう少し時間がかかりそうだ。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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