『持続可能な恋ですか?』第1話に覚えた違和感の正体 “父娘の関係の変化”と喪失のテーマ

『じぞ恋』父と娘の“喪失”のリアル

 『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS系)が今週、ストーリーが佳境の第8話を迎える。

 シングルファザーである晴太(田中圭)とついに交際をスタートさせた杏花(上野樹里)。その恋愛模様から目が離せない一方で、もうひとつのラブストーリーの主人公、杏花の父・林太郎(松重豊)の存在や、回を追うごとに心境の変化を見せる父娘の関係性がこのドラマを特別なものにしている。

 しかし、このドラマの第1話を観たときに大きな違和感を感じた。この違和感は物語が進むうちに解消されていくのだが、その違和感の正体と“父娘の関係の変化”に注目したい。

 2年前に母・陽子(八木亜希子)を亡くした杏花。同じく大切な人を失った父・林太郎の言動からは常に「妻を亡くした男」の喪失感や哀愁が漂う一方で、娘の杏花からはその心の傷や痛みを全くと言っていいほど感じ取ることができない。

 杏花がどうにも「さっぱりと」しすぎているのだ。

 「母は、本当に幸せだったのだろうか?」と疑問に思うシーンは描かれるものの、そこには自分自身の行く末やロールモデルを探しているような様子が伺えた。仲の良かった親子として描かれている母娘。さらに、杏花はひとりっ子でもある。「お母さん、神社行っても、いつも祈るのは家族の健康と幸せでさ——」などと語る姿には母親に向けられた特別な想いが感じられる。しかしながら、どうにも杏花には「母を亡くした喪失感」のようなものがごっそりと欠けているように見えるのだ。

 このドライさ、コミカルに描かれるシーンの数々が、むしろこのドラマ「らしさ」を作ってきたとも言えるが、内心は「娘のために」と父が始めた婚活にさえ「がんばって。お父さんがそれで幸せになれるなら」と杏花はぐっと背中を押す。

 亡き母を想って逡巡する様子や、母と娘の回想シーンも物語では一度も挟まれることがない。母娘のふたりをつないでいるのは、仏壇代わりの棚に置かれた、寄り添って写る1枚の写真だけのように思えるのだった。

 そんな理由がようやく明かされるのが、第5話のことだ。

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