笠松将、世界に飛躍する俳優へ 『TOKYO VICE』で見せたホンモノの存在感

『TOKYO VICE』MVPは笠松将

 『TOKYO VICE』は、『ヒート』『インサイダー』などで知られる巨匠マイケル・マンが、2015年の『ブラックハット』以来に監督(第1話のみ)を務め、シリーズのエグゼクティブプロデューサーにも名を連ねる最新作だ。

 マイケル・マンと言えば世界で最も都市の夜景を美しく撮る監督であり、男たちの戦いを描いてきた映画作家である。これまでもアル・パチーノVSロバート・デ・ニーロ(『ヒート』)、はたまたアル・パチーノVSラッセル・クロウ(『インサイダー』)、トム・クルーズVSジェイミー・フォックスもあれば(『コラテラル』)、ジョニー・デップとクリスチャン・ベールが相まみえたこともあった(『パブリック・エネミーズ』)。

 『TOKYO VICE』もまた新聞記者・アンセル・エルゴートと刑事・渡辺謙の共闘が見どころの1つだが、マイケル・マン作品といえばそんなツートップの下で光り輝く3番手の存在を忘れてはならない。『ヒート』では『トップガン マーヴェリック』でも存在感を発揮していたヴァル・キルマーが、『インサイダー』では昨年他界した名優クリストファー・プラマーが凄味を発揮し、場をさらってきた。今回、『TOKYO VICE』でこの“マイケル・マン作品3番手”のポジションを担うのが日本の俳優、笠松将だ。

 HBO Maxによってワールドリリースされた『TOKYO VICE』を観て、多くの人が笠松将という俳優の登場に驚き、魅了されたはずだ。彼が演じるのは千原会のヤクザ、佐藤。街で出くわせば道を空けたくなるような風体の彼に、笠松はどこか虚勢を張った少年っぽさ、繊細さ、そして裏社会で生きる男の色気を同居させ、イイ面構えである。『ベイビー・ドライバー』『ウエスト・サイド・ストーリー』など人気作に出演してきた主演アンセル・エルゴートにも引けを取らず、その相性も抜群だ。

 エルゴート扮する新聞記者のジェイクは相次ぐ不審死事件を追う中で、笠松演じる佐藤と出会い、交流を深めていく。笠松とエルゴートはわずか2歳違い。回を追う毎にそれぞれの語学力も向上しており、一緒にツルむうちに友情も語学も培われるというリアルなケミストリーを再現することに成功している(バックストリート・ボーイズの「I Want It That Way」の解釈を巡るやり取りは爆笑モノ)。笠松は身長182センチ、193センチの長身エルゴートに見劣りしない体格の良さにも目を奪われた。

 もう1人、笠松が多くの場面で共演するのが高級クラブの人気ホステス、サマンサに扮したレイチェル・ケラーだ。マーベル原作のTVシリーズ『レギオン』でヒロインを務めたケラーを相手に、笠松は包容力たっぷりの色気で魅せる。佐藤は女遊びも心得た極道だが、惚れた相手には無骨ながらも一途。笠松にはキスシーン1つを取っても、心の底から誰かを愛したのは初めてだと思わせるような繊細さがあり、その表現力に驚かされる。窮地のサマンサを救うべく、暴力に身を晒すことで内なる獰猛さにおののいていく第6話は本作のハイライトの1つだ。

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