『トップガン マーヴェリック』は完璧な続編 トム・クルーズが「カッコいい」を全力で体現

『トップガン マーヴェリック』は完璧な続編

 本作のマーヴェリックは若手を鍛える厳しいコーチであるが、そっちに引っ張られ過ぎず、1986年に世界を虜にした魅力を失っていない。つまり鼻っ柱が強く、ヤンチャだけれど愛嬌があって、それでいてどこかに弱さと哀しさがある。メチャクチャにカッコいいが、ちょっと間の抜けた部分もある愛すべきハンサムボーイ。この典型的な80年代ヒーロー像を、今の時代に違和感なく存在させているのだ。これについて、ちょっと冷静に考えてほしい。還暦間近で「ヤンチャ」が許される人間なんて、普通いるだろうか? これが逆に70~90歳になると可愛げになるが、中年ド真ん中での「ヤンチャ」属性は、なかなか魅力的に見せるのが難しい。常人なら「イイ歳して何やってんだ」と冷たくツッコまれて終わりだが、「ったく、マーヴェリックは変わんねぇなぁ(苦笑)」と微笑ましい気持ちにさせてしまうのは、トムの役者としての力だ。一歩間違えば『黄昏流星群』的な生々しいモノになりそうな中年同士のロマンスも、まるで10代の少年少女の恋愛のようなキュートなノリにしてしまっている。自分が時代遅れの存在になりつつあると自覚している中年の悲哀と、まだまだこれからという野心溢れる若手のヤンチャ感。相反する二つの要素を絶妙なバランスで体現している。これはトム・クルーズだけができる芸当だろう。

トップガン マーヴェリック

 「カッコいいとは、こういうことさ」とは、同じく戦闘機映画の傑作『紅の豚』(1992年)の宣伝文句だが、これは本作に当てはまる。トムクルさんが『トップガン』、ひいては自分に求められている「カッコいい」を全力で体現している映画だ。観終わったあとは白Tにジーンズにライダースジャケットを羽織りたくなること必至である(これからクソ暑くなる季節なのに)。繰り返しになってしまうが、もしも観ようかどうか迷っているなら、是非とも劇場へ向かうのをオススメしたい。本作は間違いなくトム・クルーズの新たな代表作である。

■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
全国公開中
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
配給:東和ピクチャーズ
(c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
公式サイト:https://topgunmovie.jp/
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