『ちむどんどん』に遺る大森南朋の存在感 亡き父親たちはいつも朝ドラヒロインの支えに

『ちむどんどん』に遺る大森南朋の存在

 沖縄が本土に復帰したその日、暢子(黒島結菜)はちょっとの不安を抱えつつも、“ちむどんどん”しながら東京に向かった。東京生活で早くも垢抜けた親友の早苗(高田夏帆)と銀座の西洋料理店「アッラ・フォンターナ」で食事をし、気分は最高潮。順調な東京生活をスタートさせた。

 というのは最初の数分だけで、暢子はそこからアップダウン激しい日々を過ごすことになる。頼りにしていた兄を訪ねると、ボクシングジムから失踪したことを知らされ、早速住む家がなくなってしまった。途方に暮れる暢子の耳にとどいたのは懐かしい三線の音色。その音を頼りに訪問したのは、鶴見の沖縄県人会会長・平良三郎(片岡鶴太郎)の家だった。三郎が就職先のツテがあると暢子を連れてきたのが、まさかの「アッラ・フォンターナ」。オーナーは大城房子(原田美枝子)という女性で、店に独裁的に君臨。暢子は料理テストを受け、なんとか「アッラ・フォンターナ」に就職した。「大城」というのは沖縄に多い苗字で、房子もどうやら沖縄にルーツがあるよう。暢子は偶然にも沖縄の人たちに囲まれながら、忙しい日々を過ごしている(そして早くもクビの危機にある)。

 房子から課せられた料理テストで、よく作っていた沖縄そばを作ろうと思い立った暢子は、厨房にあった食材をもらい、麺を打っていた。レシピはいつも通りでも、いつもとは違う材料、調味料。水だって違う。そこで暢子はふと不安になるのだ。「これ、本当においしい……?」。くじけそうになった暢子が思い出したのは、幼き頃に父・賢三(大森南朋)からかけられた「これが美味しい!と思ったものを出しなさい」という言葉。賢三と沖縄そばを作った思い出とともに、暢子は自信を取り戻し、再び麺に向かった。作った沖縄そばは「アッラ・フォンターナ」の従業員たちを唸らせる出来だった。暢子は亡き父に支えられ、料理人として大きな一歩を踏み出すことができたのだ。

 暢子の「暢」はのんびりとした様を表す暢気(のんき)の一文字としても使われるが、暢子はいつも「アイヤー!」「まさかやー!」と大きなリアクションをし、まったくのんびりなどしていない。だが暢子が時々思い出す父は、彼女とは対照的に、ゆったりしていておおらかだ。「はっはっはっ!」と笑う賢三の姿が、焦る暢子の気持ちにつられてドキドキしてしまう私たち視聴者の気持ちも静めてくれるような気さえする。

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