『鎌倉殿の13人』菅田将暉の義経が純粋過ぎるがゆえに切ない 見事な源平の兄弟の対比

『鎌倉殿』義経が純粋過ぎるがゆえに切ない

 戦いの後、宗盛との対話と懐かしい人との再会で義経の情の深さがうかがえる。死罪が決まっている宗盛は、息子・清宗(島田裕仁)を案じ、体だけでも親子そろって埋めてほしいと義経に頼んだ。罪人同士で話すことが許されない中、義経は京へ戻る前に宗盛が清宗と面会できる場を設け、「今夜は親子でゆっくりと語り合うがいい」と穏やかな口調で言った。宗盛との数々の対話の中で、義経は兄・頼朝のような冷酷さを見せることは一度もなかった。それどころか、書くのが苦手な義経のために筆を執る提案をした宗盛に、素直に願い求める顔を見せている。義経一行が相模で世話になった藤平太(大津尋葵)との再会では、「お〜、懐かしい顔だ!」と嬉しそうな声をあげ、民衆と語らいながら芋の煮物を美味しそうに頬張る。民と語らう義経の姿を見て、義時は微笑んでいた。

 義経と民衆の間にあった和気あいあいとした雰囲気を、力で坂東武者たちをまとめあげた頼朝は持ち合わせていない。義経の力を恐れるあまり、頼朝は義経を遠ざけてしまった。義時の必死の説得も、頼朝の耳にはもう届かないだろう。家のため兄のため純粋に突き進んできた義経が悲劇の武将となることが切ない。

 なお、第18回は小泉孝太郎演じる宗盛の、敗北を喫した後の穏やかな佇まいもまた印象深かった。壇ノ浦で「もはや、これまで」と口にした小泉の表情はやるせなさに満ちていたが、全てが終わった後、小泉の立ち居振る舞いからは、自身の死罪も含め、全ての事象を受け入れる心の落ち着きが感じられた。小泉の演技は、義経の今まで見えてこなかった情の深い一面をひときわよく感じさせていたように思う。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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